宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

これからの中国

2023年6月24日   投稿者:宮司

 1978年、鄧小平が改革開放を宣言したとき、中国の経済発展が始まった。

 以来45年、世界第二の経済大国となった中国は、習近平共産党総書記・国家主席の指導のもとに、王道国家を名目に、一帯一路政策を推進し、かたや戦狼外交を展開し、世界を指導する大国となる道を歩もうとしている。それを感知した米国は、2018年あたりから米中対決の姿勢を打ち出し、新冷戦と呼ばれる緊張が国際社会に作り出された。

 そして2022年、ウクライナ戦争の勃発とともに、世界は権威主義国家群と民主(自由)主義国家群とに分かれ、対決の姿勢を強め、第3次世界大戦前夜ともいうべき緊張感に包まれているように見える。

 問題は中国の将来である。中国はこれまで同様、いやそれ以上の発展を遂げて、米国を凌駕するような主権国家となることができるのか。ここではそれを考えてみる。

 近代化に伴う経済成長は、一度きりのものであることは再三述べてきた。中国は近代化を達成して成熟社会に入ったのであろうか? 一人当たり国民所得を見れば、12,600ドル(2022年)であり、13,000ドルという国連が高所得国とする水準まではもう一歩。先進国入りが目前である。しかし、未だ3万ドルをはるかに下回っていて、その意味では、いまだ発展途上国である。ちなみに日本は4万ドルをやや超えている。
 
 これは、中国が沿岸部の高所得地域と内陸部の低所得地域に分かれていて、内陸部の人口がまだまだ膨大である結果と考えられる。

 しかし、一方、中国は、統計的には、すでに少子化社会に向かっており、これは、先進国の基準を満たしている。

 このような状況を見れば、中国はいまだ貧富の格差が著しい先進国であると言える。従って、経済が発展している沿岸部地域の労働賃金は高騰しており、すでに中国の「世界の工場」としての役割は終わったように見える。

 これ以上の経済成長を目指すならば、新しい技術開発が不可欠であり、それを商品化して世界に売り出すための自由貿易体制が今まで以上に必要となる。しかし、国際緊張が強まれば、そのようにはならない。

 「世界の工場」としての日常生活必需品の生産はグローバルサウスと呼ばれるような地域に確実に移転するであろう。

 少子化は、労働者の欠乏だけでなく、軍隊の兵員の欠乏にも直結するので、人民解放軍の力は衰えていく。それを無人兵器(Auto Weapon)の開発で補うことを狙うであろうが、国際緊張の結果、半導体等の技術部品が簡単に手に入らないようであれば、それも覚束ないこととなる。
 
 また、指導者の習近平は、権威主義社会の悪弊である贈収賄や情実社会の撤廃に精を出してきたが、権威主義社会では根絶は不可能である。そして、共産主義的平等の理念のもとに、大企業や高所得者から理不尽に徴税し、それを貧者に分け与えようとしている。これは自由主義市場経済の法則を無視した方法であり、経済の不活性化を招くに違いない。

 今では、毛沢東の行ったと同じ、農村開発の美名のもとに知識人や高所得者を農村に追いやるような間違いを起こすのではないかと懸念されている。もしそれを行えば、それは中国の決定的な弱体化を生み出すであろう。

 従って、これからは、朝令暮改のダッチロール的な社会運営を行うのではないかと予想される。

 このように見てくると、中国の発展はそろそろ限界であって、難しい。これを回避するには、現在の国際緊張を緩和し、世界との協調路線に乗っていくしか道はない。

 現在、少し兆しが見えてきた米中和解もそのような情勢を踏まえての変化と考えられる。

 従って、中国はロシアを見殺しにせざるを得ない。ロシアの衰退による漁夫の利を狙うのではないか?

 台湾への武力侵攻もあり得ない。国際的に一つの中国を認めさせつつ、台湾が自ら中国と一体化しようとする時を気長に待つという政策を取ると考えられる。

 日本は、今以上に、民主(自由)主義陣営の結束を固め、中国の戦狼外交をたしなめ、欧米主導の国際情勢を維持できるように努力すべきであろう。中国の民主化を気長に促していくという努力も忘れてはなるまい。     (2023/06/24)

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