宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

反撃能力というまやかし

2022年8月13日   投稿者:宮司

 本年4月、自民党が政府に提言した日本の国家安全保障戦略には、「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」に名称変更し、このための兵器を保有することなどを盛り込んでいる。


 これは、「専守防衛」の放棄であり、憲法第9条に違反している。どのように解釈改憲しようとしても、説明できない。


 一般に、国際法で戦争が禁止されて以来、戦争の開始は、防衛の目的以外で開始されることはない。ロシアのウクライナへの侵攻も、「ウクライナがNATOに加盟し、その結果として対ロシア国境に核兵器が配備されることを除去するための防衛目的の特殊軍事作戦」であった。古くは第日本帝国の支那への進駐も、邦人保護の防衛目的のものとして開始された。米国を中心とする連合軍のイラク侵攻も、「先制的自衛権の行使」として開始された。


 従って、真に自衛のための戦争であるか否かは、戦地がどこであるかにかかっている。例えば、ロシアや北朝鮮が日本に侵攻したとして、侵攻された地域である新潟や北海道が戦地となれば、これは防衛目的のものであると断言できる。しかし、こういった侵攻を防ぐために、先んじて反撃能力を使い、ロシアや北朝鮮のミサイル発射基地を攻撃すれば、それは防衛に名を借りた戦争の開始となる。第一撃を受けたのちに敵基地を攻撃するということも考えられるが、それとても正当性はない。それは丁度、真珠湾を理由として大日本帝国を潰した米国の戦争と同じになる。日本人の誰が考えても、これを米国の専守防衛戦争とは思うまい。結局、反撃にしても、敵基地攻撃にしても、敵地を戦場とするのであるから、専守防衛の戦闘ではない。


 現在も続いているウクライナ戦争でなぜ米英をはじめとする西側諸国がウクライナを支援するかといえば、それは戦地がウクライナ国内に限られているからだ。仮にウクライナが戦闘能力を増して、ロシア国内へ侵攻するとしたら、一挙に西側は手を引くであろう。


 つまり、専守防衛とは、苦しいけれども、日本国内を戦地としてのみ、戦うことができる。従って、そのための準備が必要であり、それは、防空能力の向上、ミサイル防衛システムの充実、侵攻された場合を想定した各種シェルターの設置、適切な自衛軍の配備と戦闘能力の錬磨といったことであり、敵基地を攻撃する能力を持った攻撃型中距離ミサイルや核兵器の配備といったことではない。そんなものは防衛族と称される兵器マニアの国会議員たちのおもちゃにしかならない。
 そして、侵攻された日本が防戦をしている間に、集団的自衛権を共有する米軍の来援を待つのが本来の専守防衛のスタイルであると考えられる。

 もう一つ、大切なことがある。他国から侵攻されることを抑止する最大の防衛手段は、日本の経済力や政治力を高め、日本と戦争しても得るものは少なく、失うものが大きいと他国に思わせることである。防衛力とは、総合的なものなのだ。(2022/08/13)

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