宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

日本は中国とどのように対峙すべきか

2021年7月19日   投稿者:宮司

 バイデン政権発足以降、米国は中国の覇権主義と新疆ウイグル自治区を代表とする少数民族の人権侵害への対応を強化している。

 軍事的には日米豪印四ヶ国による戦略協定を結び、アジア太平洋の対中国包囲網をつくり、経済的にはウイグル自治区関連の企業への制裁を科している。しかし一方では、中国の台湾侵攻への危機感をトーンダウンし、中国との競争的な共存を模索してもいる。いわば、硬軟両面から対中関係を構築しようとしている。中国敵視一辺倒ではなく、このような政策バランスを維持していくことは好ましい。

 一方、日本では、日中関係重視の政策がまかり通っている。中谷前防衛相らが提唱した日本版マグニッキー法(人権侵害責任者の資産凍結や入国禁止などの制裁措置のための法案)も廃案となり、相変わらず日中の経済関係に重点を置いた政策が行われている。軍事的には世論の後押しもあり、日米、日英、日米豪仏等の共同軍事訓練を行い、対中国のプレゼンスを高めてはいるが、経済的な対中制裁や人権問題の追求には及び腰である。

 欧州はどうか?最近の情報によれば、今年3月22日、EUの「欧州議会」は、中国の新疆ウイグル自治区の人権弾圧に関して、中国人関係者4人と1つの機構に制裁を科すことを議決した。それに対し、中国は報復措置としてEU関係者10名と4つの機構に対し制裁を科した。EUの制裁が新疆自治区関係者に絞られているのに対し、中国の制裁は広範にわたり、しかもその中に、ラインハルト・ビュティコファー「対中関係代表団」議長が入っていた。激怒したEUは、習近平が2013年から7年間もかけて推進してきてほとんど締結寸前であった「中欧投資協定」を5月20日に凍結した。これは対米経済関係が冷え込む中で対欧州の経済関係に活路を求めようとしていた中国にとって大きな痛手となっている。(遠藤誉 「習近平最大の痛手は中欧投資協定の凍結――欧州議会は北京冬季五輪ボイコットを決議」参照)

 このように、対中国では、軍事プレゼンスの強化より、経済協力をやめることの方がはるかに効果的である。日本も大いに参考にしなければならない。

 そして、中国の国際的な面子を潰すことも極めて効果が高い。それは、中国人の文化の中で、面子は最も重視されるものであるから、習近平政権が面子を失えば、国民から見放されるからである。

 従って、日本は、来年、2022年冬季北京五輪に対し、慎重に対処すべきだ。新疆ウイグル自治区の大量虐殺を認定し、参加を控えることを考えるべきである。今回、中国が東京オリンピックに大勢の代表団を送って、東京五輪を支えようとしているのも、北京五輪を成功に導くために日本に恩を売ろうとしているのである。     (2021/07/19)

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