宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

グローバル化と民主主義の危機

2024年5月5日   投稿者:宮司

 本ブログ中「虚偽主義とポピュリズム」や「グローバル化と主権国家」で記したように、グローバル化は国家の意味を薄くし、ポピュリズムを生み出す。そして、ポピュリズムが虚偽主義と結びつくとき、民主主義を危機に追いやる。

 もう少し詳しく見てみる。啓蒙思想と民主主義は、国民総意による国家の運営を前提しているので、国家の消失は民主主義の危機とつながる。帰属意識の拠り所として国家に代わる社会的な組織が必要であるが、地球共同体は未だ漠然としすぎていて、実体感がないので、国家の代わりにはなれない。

 結果として、人々は、個々人の問題を解決すべき課題として捉えて政治に参加するので、ポピュリズムに流れ、そこに悪意に満ちた虚偽主義が結びつくと一挙に民主主義を崩壊させる。米国でトランプ大統領を生み出したものは、まさしくこれである。

 グローバル化は人類を個人化し、諸個人は多様な動きをするので、階層集団を複雑化し、これを分裂させる。結果として階層集団を基礎とする代議制民主主義の構造を崩していく。これは、民主主義を危機に追いやることとなる。

 すでに、近代化によって、階層が複雑化してくることは幾度も述べてきた。これはグローバル化による個人化が進むとますます顕著となり、階層集団を分解していく。ステークホルダーをまとめ上げることは難しくなる。よって代議制民主政治は必然的に多党化していく。

 これらが、グローバル化による民主主義の危機の実態である。

 これを救うには、代議制民主主義に代わる民主主義の新しいシステムを構築する必要がある。そのために有効であると考えられるのは、地球上のすべての諸個人が共有できるインターネットであり、それを利用した地球規模の直接民主主義である。さまざまな規則や規制を作ることが必要であるが、最終的には、デジタル社会の成熟も含めて考えれば、これが将来の民主主義の形態であると予想する。

 このシステムをきちんと運用するためには、虚偽情報に踊らされない、正しい社会観と責任意識を持った諸個人の育成が必要となる。そのためには、社会の中に無数の意志共同体を作り、その中で、諸個人が正しい社会意識を身につけることが重要となるであろう。(2024/05/05)

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