宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

中国経済の異変

2024年4月18日   投稿者:宮司

世界の工場としてグローバル化の恩恵を最も受けてきた中国経済が危機的な状況である。

 2020年の不動産バブルがはじけた後の適切な対応ができていない。過去の日本の不動産バブル崩壊後の処理を研究していれば、対処できるはずであるが、必要なことが全くなされていない。逆に見当違いな経済政策で、世界経済に悪影響を及ぼそうとしている。

 中国は、安価な労働力と社会資本の整備、安定した治安を魅力として外国資本を呼び込み、世界の工場として爆発的な経済成長を遂げた。その結果労働賃金も上昇し、国内の購買力も沿岸部を中心に増大し、技術力も向上した。したがって、本来であれば、輸出主導型から、内需主導型の経済成長に切り替わらねばならない。本ブログでも、度重ねて主張してきたことである。

 それが、内需については不動産を主として投機的な市場を作り出し、無理な信用貸与によってこれを膨らませ、ついには投資規制によってそのバブルが崩壊した。

 これを収束させるには、十分に蓄えられた政府資金を市場に注入し、不動産会社や金融機関の債務整理を断行し、潰すべきところは潰し、残すべきところは残す。市民に対しては大幅な金融と規制の緩和を行い、債務負担を軽減し、労働意欲を減退させない配慮が必要である。

 また、都市化した地域に連なる内陸部に内需に応じた生産の為の工場を設置し雇用機会を増やし、国民全体の生活程度を上げるための規制緩和や内需振興策を実施することが必要である。

 しかし、中国政府は、これらの基本を無視し、崩壊したバブルを放置し、政府主導で技術開発に邁進し、安価で高い技術を持った工業製品を輸出して国家の利益を上げようとしている。

 これは、グローバル化に伴う自由貿易で成長した中国経済にとって明らかなマイナスとなる。第一に、初期の工業資本は国際資本であったので、それなりに中国からの輸出の利益は海外に移転し、バランスが保たれた。しかし、中国は権威主義的な国家の運営により、国際資本の撤退という現象を生み出し、それを、自国の技術力の向上に利用した。その結果、中国資本による輸出体制が整い、安価で高技術の製品を他国へ売り込もうとしている。

 これは、国際経済のバランスを無視した行為で、自由貿易体制を損なってしまう。欧米や日本などの輸入国も、自国産業の保護や雇用を守るために関税をかけざるを得ず、結局、自由貿易を柱とするグローバル経済は後退し、ブロック経済が復活し、世界経済は成長を止めることとなる。

 かつて、日米も、日本の技術力の向上と安価な労働力による輸出ドライブを米国に非難され、話し合いで調整し、自由貿易体制の維持に務めた。そのようにしなければならない。トヨタが米国に工場を持つように、中国資本のLenovoやBYDが米国に工場を開設する日が来れば、この問題は終わるであろうが、権威主義により硬直的で自国本位の経済政策を重ねる中国では、先行きが危ぶまれる。(2024/04/19)

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