宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

グローバル化と環境問題

2024年4月14日   投稿者:宮司

 20世紀に発生した環境破壊の問題は、人類の課題として重く受け止められた。

 そのいくつかを検証してみよう。砂漠化の問題は、人間が生活資材として木材を切り出したり、高値で取引されるカシミアを確保するために羊を無制限に飼育することから生じた。植林を進め、砂漠の緑化を進めているが、解決には至っていない。オゾン層の破壊は、フロンガスが使われたことから始まったが、今では、フロンガスの代替ガスができ、オゾン層を破壊しないので、収束している。漁獲資源の乱獲による資源枯渇の問題は、漁獲量を制限することによって解決した。大気汚染の問題は不純物を含む工場の排出ガスを法的に規制し、浄化装置をつけることで解決した。水質汚染、土壌汚染、海洋汚染の問題は、汚染物質の垂れ流しを規制したり、プラスチック等のゴミを少なくしたりすることによって解決しようとしている。地球温暖化と気候変動の問題は、CO2の排出規制を地球規模で達成することによって解決しようとしているが、各国の足並みが揃わず道半ばである。また、資源の枯渇や生物多様性の危機の問題は、解決の目処が立っていない。

 このように概観すれば、環境問題とは、畢竟、人間の生活に関わる代謝活動によって生じたものであると言える。つまり、人間が増加しなければこのような問題は生じないのだ。20世紀は、地球上で常に人口が増加し続けていたので、この人口問題をどのように解決するかが最大の問題であった。いずれは、人間は地球以外に居住地を見つける必要があるのではないかとも考えられ、宇宙開発が行われた。

 あるいは、増えすぎた人口を減らすために、戦争や疫病が必要であり、それを陰の支配者たちが画策しているという陰謀論まで飛び出した。新型コロナのワクチンが人類削減を目的として作られたなどという近年の陰謀論もその一つである。

 しかし、21世紀に入って、先進国社会で人口が減少することが観測されるようになり、にわかに人口増加の問題に解決の糸口が生じた。

 すなわち、先進国で人口の自然現象、少子高齢化が生じたということは、地球上のすべての地域の人々が先進国の人々と同じような生活を送るようになれば、地球上の人口は自然に減少するということがはっきりしたのである。

 そのためには、現存する環境と資源を維持しつつ、人口の減少が地球規模で起きるまで、耐えなければならない。実は、「Sustainable Development」とは、そのための標語である。

 先進国並みの生活が送れるということは、ハード、つまり物質面の充実だけではない、ソフト、つまり社会制度や法体系、倫理観等も備わって初めて、自由で民主的で、豊かな生活ができる。SDGsが、豊かな生活と共に、基本的人権や男女の平等や成熟した民主主義などを達成目標に含めているのはそのせいである。

 先進国では、少子高齢化社会の対策として、出生率の向上などが模索されているが、的外れである。それよりも、発展途上国から若者を迎え入れて、一人でも多く、早く、先進国並みの生活ができるように配慮すべきである。グローバル化に伴う人々の移動は、まさしく、それを促している。

 結論を言えば、環境問題の解決には、グローバル化は必要不可欠である。グローバル化によって、世界の生産力が増大し、国境を越えて人間の交流が進み、人々の生活が豊かになり、人口の削減が進むことによって、すべての環境問題が解決する。

 21世紀中に地球人口は最大の増加点を迎えて、以降は減少していく。予測では、100億人程度と言われてきたが、年々そのピークの予想は下がっている。今では、2086年104億人と予想されている。これをグローバル化の加速により、100億人以下に縮めることが望ましい。(2024/04/15)

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