グローバル化と貧困
2024年4月3日 投稿者:宮司
グローバル化と貧困の関係について述べる。
下図は、世界の貧困層の推移を示したグラフである。
ここでいう、貧困層とは、どのような人々をさすのか?
1990年、世界銀行は、世界的な貧困層を把握するための指標として「世界貧困ライン」を設定し、最初の国際貧困ラインが1日1ドル以下で生活する人々と定められた。2005年には国際貧困ラインが1日1.25ドルに変更され、2015年からは1日1.90ドルに設定された。
2015年の統計では、極度な貧困層は7億3,600万人と発表された。1990年の時点よりも大幅に貧困層の数は減ったが、まだまだ貧困に苦しむ人々は多い。
この図を見てはっきりするのは、21世紀に入った頃から、貧困層が急激に減っていることだ。1995年をピークとして、貧困層が世界的に減少しだしたのである。
これは、グローバル化による世界経済のグロスの急激な上昇に伴い、富が各所に行き渡り、貧困層の人々が減少していることを示している。コロナの一時期、この現象が停滞したが、現在はまた減少傾向に戻っているという。
特に、東アジアでは21世紀に入って貧困層が激減したことがわかる。これは主に中国の経済発展によるものである。南・東南アジアでの貧困層の減少はやはりその地域、インド、インドネシア、タイ、ベトナム等の経済開発によるものだ。
一方、サハラ以南のアフリカでは貧困層が増加している。これは中央アフリカやコンゴでの内戦や紛争で社会が混乱していることが原因であると考えられる。
つまり、貧困をなくすには、グローバル化による各地域の経済開発を進め、紛争や内戦を停止し、社会を安定させることに尽きる。そのためには、先進国からの技術や資本の援助を進め、国連が中心となって平和を希求する国際世論を高め、粘り強く平和を推進していかねばならない。
グローバル化が貧困を助長するということはない。その反対に、グローバル化こそが貧困をなくす最も適切な方法であると言える。
なぜ、グローバル化が貧困を助長するといった誤解が生まれるのか?それは、一方ではグローバル化が極端な富裕層を多数生み出し、彼らの所得割合が極めて高いので、貧富の差を広げているように見えるからであろう。
しかし、現実には、前ブログで見たように、現在徐々に中産層の所得割合が増え、富裕層の所得割合が減ってきているので、貧富の差は少しずつ縮まっている。そして、貧困層も少なくなっている。グローバル化は、より多くの人間が、生活資源を安定させ、豊かに暮らすことができる世界を作り出していると言える。(2024/04/03)