宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

ウクライナ戦争の帰趨

2024年3月4日   投稿者:宮司

 ロシアが勝つか、ウクライナが勝つか、巷では、意見が錯綜しているが、最近では、ロシアが勝つのが順当であるとの意見が多数を占めるようになった。

 しかし、この戦争は、ロシアが勝ってはならないのである。前回ブログの「反グローバルのうねり」でも述べたように、ロシアが勝つということは、反グローバルの動きが実るということになる。そうなれば、おそらく人類の運命も途絶える。第一次産業革命の折も、第二次産業革命の折も、人類は前へ前へと歩んできた。第三次産業革命ともいうべきインターネットの成立とグローバル化の今回も、人類は前へと進まなければならない。

 第一次産業革命とは、食料調達における農耕と牧畜の始まりである。最近の研究によれば、ネアンデルタール人は、現生人類と交配していたが、彼らは、農耕や牧畜に興味を示さず、体力に任せて自力で獣を狩り、食料を調達することにこだわって、死に絶えていった。第二次産業革命は工業化革命であるが、それは反近代のエネルギーを呼び覚まし、第二次世界大戦に繋がっていった。結果は反近代の勢力である独・伊・日の三国同盟が敗北し、世界の近代化が進んでいった。

 当時の日本では、ナチスドイツの快進撃を見て、ドイツがヨーロッパを征服すると考え、日独伊の三国同盟を強く望む世論が大勢を占めていた。結果はご存知の通り。世論の予測は当てにはならない。

 第三次産業革命はIT革命であり、その結果としてのグローバル化が今進んでいる。そしてこれに対する反動のエネルギーがネット空間にポピュリズムと虚偽主義を作っており、それが反グローバルのうねりに繋がっている。グローバル化により主権国家が解体せざるを得ない状況となって、その反動として権威主義国家が力を付け、ウクライナへの侵略が起きたのである。

 国連が提唱するSDGsの目的を見れば、人類が、貧困をなくし、個人の自由を尊重し、環境破壊を食い止めるためのグローバルな体制を整備する方向に向かっていることは、明らかである。

 権威主義国家の横暴が、そう言った体制の構築を妨げる方向に動いているように見えるが、歴史がそのように動くはずがない。今は、いろいろな事情が、ロシアや中国、北朝鮮、イランといった国々、つまり権威主義国家の優位を作っているように見える。そして、米国大統領選挙も、権威主義を擁護すると思われるトランプ政権の復活に動いているように見えるが、必ず、最終的には、これらの反グローバルの動きは抑止され、時代は、地球共存、貧困の撲滅、個人が自由に意見を述べ合う社会の実現の方向に向かうに違いない。

 私たちはあきらめてはいけない。仮にトランプ政権が成立し、米国が欧州から手を引いても、欧州は一丸となって、ロシアの権威主義の横暴を止めようと動くであろう。トランプ政権に代わる次期米国政権はそれを応援するであろう。日本も、グローバルな立場に立って、世界の国々の調整を続けて行かなければならない。(2024/03/04)

世界-日本