宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

イーロン・マスクとジェフ・ペゾスを哂う

2024年2月19日   投稿者:宮司

 今日配信されたニュースの中に、「イーロン・マスクとジェフ・ペゾスが共に、21世紀の人類の最大の課題は、地球温暖化という環境問題ではなく、人口減少である」というものがあった。両人が本気でこれを言っているとしたら、哂うべきことである。

 ご存知の通り、近年では、先進国における人口減少とそれに伴う高齢化が共通の課題として認識されてきた。これは、20世紀を通じて人類の最大の問題とされていた人工増加の問題が、自然に解決されるであろうことを示唆するものであって、困る事柄ではない。
 
 19世紀には、マルサスが、「人口論」の中で、人口が無限に増え続けると、人類は、経済開発以上に人口が増え続け、慢性的な飢餓に襲われると説いたが、20世紀にはそれが間違っていることが証明された。国連の統計では、現在、世界で一日1.25ドル以下で暮らす貧困層の人々や飢餓状態の人々は年々減少している。

 20世紀には、人口増加が続けば、人類は地球に住めなくなるので、宇宙空間に居住環境を作って、移民しなければならないとか、人口調節のために避妊教育や避妊措置の必要性が叫ばれたり、あるいは、一定程度に人口を調整するために戦争や疫病が必要であるとかの乱暴な意見が述べられたものだ。

 しかし、これも、21世紀になって、人間が一定の文明的な生活を営めるようになると、自然に人口減少社会になるという事実が判明するに及んで、全ての人間が文明的な生活を営むことができるようにすることで、人口問題の解決ができる見通しが立った。そのために、国連は、SDGsという開発目標を掲げて、現在に至っている。

 イーロン・マスクもジェフ・ベゾスも、共に宇宙開発のビジネスを先行的に行なっている。彼らは、自分たちの始めた宇宙開発や宇宙移民という事業を発展させるために、地球上の人口増加が必要であり、地球環境の悪化が必要であるのだ。それゆえに、地球環境より人口減少を問題とするのだ。

 こんな見え透いた自分本位の主張に踊らされてはいけない。人類が、文明的な生活のなかで自然に人口調節をおこなえるということは、神の摂理のようなものだ。これは、もうしばらくは、人類は、地球という故郷を大切にして、そこで暮らしなさいということのように思える。すなわち、環境問題に真剣に取り組み、これを解決し、地球に住み続けることこそが重要なのだ。

 人類の全てが文明的な生活を送ることができるようにするためには、環境問題に留意しながら発展途上国の経済開発を行うことができるように先進国が支援し、また、発展途上国から先進国への適切な程度の移民を継続的に行うことによって、より早く目的が達成できるはずだ。このためには、全世界の国々が人類の利害のために協力し、調和して努力し、平和的な共存を作り出していかねばならない。国家の利害を超えて、協力するのである。

 このためにこそ、すでに人類は各種の国際的な協力機関を整備している。それらをもっと発展させて、強力な結びつきの力で、より良い方向へ人類全体を導いていくことが必要である。現在、ロシアの横暴や地球温暖化に対して先進国が協力して立ち向かっているのがその良い例である。もちろん、このような協力を否定して、多極化の時代とか、環境問題は欺瞞といった虚説を振り撒く人々もいる。乗せられてはいけない。各人の健全な意識の確立が必要である。

 念の為に記しておくが、宇宙開発が必要でないと言っているわけではない。誰しもわかっていることだが、地球にも寿命がある。太陽が超新星となるとき、地球もなくなる。それははるか先の話であるが、もし人類がそんな時まで生き残っていたら、その時こそが、宇宙植民が必要となる時であろう。(2024/02/19)

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