宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

SDGsとESG

2024年2月10日   投稿者:宮司

 SDGsは現今の流行語となりつつある。しかし、その実態を正確に理解できている人は少数であろう。

 日本では、特に、SDGs(Sustainable Development Goals)、つまり持続的な開発目標という表現の持続性に捉われて、循環型社会を発想する人が多い。しかしこれはSDGsの17の目標の内の一つにすぎない。

 それでは、国連が合意したSDGsの17の目標を以下に挙げてみる。
目標1 (貧困) あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる。
目標2 (飢餓) 飢餓を終わらせ、食糧安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する。
目標3 (保健) あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。
目標4 (教育) すべての人々への包括的かつ公平な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する。
目標5 (ジェンダー) ジェンダー(性)平等を達成し、すべての女性および女子のエンパワーメント(力を引き出すこと)を行う。
目標6 (水・衛生) すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する。
目標7 (エネルギー) すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な現代的エネルギーへのアクセス(関与)を確保する。
目標8 (経済成長と雇用)包括的かつ持続可能な経済成長、およびすべての人々の完全かつ生産的な雇用とディーセント・ワーク(適切な雇用)を促進する。
目標9(インフラ、産業化、イノベーション)レジリエント(回復力のある)なインフラ(社会資本)構築、包括的かつ持続可能な産業化の促進、およびイノベーション(革新)の拡大を図る。
目標10 (不平等) 各国内および各国間の不平等を是正する。
目標11 (持続可能な都市)包括的で安全かつレジリエントで持続可能な都市および人間居住を実現する。
目標12 (持続可能な生産と消費) 持続可能な生産消費形態を確保する。
目標13 (気候変動) 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。
目標14 (海洋資源) 持続可能な開発のために海洋資源を保全し、持続的に利用する。
目標15 (陸上資源)陸域生態系の保護・回復・持続可能な利用の促進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・防止及び生物多様性の損失の阻止を促進する。
目標16 (平和)持続可能な開発のための平和で包括的な社会の促進、すべての人々への司法へのアクセス提供、およびあらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包括的な制度の構築を図る。
目標17 (実施手段)持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する。
(内閣府資料より、理解のために少し訳語を加えた)

 これらの17の目標を2030年までに達成しようとすることが、2015年に国連加盟国193カ国全会一致で定められたのである。そしてより細かな目標として169のターゲットが設定された。

 例えば、前回のブログ「グローバル化と世界経済の行方」でも述べたように、世界の貧困率は経済のグローバル化に伴う世界GDPの上昇に従って下がり、すでに1桁台になってきた。このように、グローバル化に伴う世界の人間社会の劇的な変化を利用して、望ましい人類社会の未来を作るために設定されたのが、SDGsである。国連で正式に採択された文書の表題は「Transforming Our World(私たちの世界の変革)」であり、まさに人類社会全体の質的な転換を図ったものと言える。

 これは、過去の人類の歴史の中で蓄積された価値観に基づき、グローバル化に伴う変化を積極的に利用し、人類のより良い未来を構想したものでもあった。それゆえに、人権やジェンダーの平等、貧困や飢餓の撲滅、不平等の是正や世界の平和が入っている。

 2019年に日本政府が発表した「SDGsアクションプラン2020」には、「Society(ソサエティー)5.0」の推進がある。これは、人類の過去から未来への社会の変化を次のように表している。
狩猟社会(Society1.0)農耕社会(Society 2.0)工業社会(Society 3.0)情報社会(Society 4.0)超スマート社会(Society 5.0) 

 つまり、本ブログでも常に指摘してきたように、狩猟から農耕社会への変化は、第一次産業革命(農耕と牧畜の始まり)、農耕から工業社会への変化は第二次産業革命(動力と機械の開発)、工業から情報社会への変化は第三次産業革命(IT革命)によるのだ。そして、これから起きるはずであるのは、情報から超スマート社会への変化であり、それを支えるのは新しく開発される科学技術である。

 では、それは何か?おそらくデジタル革命だ。社会の全てがデジタル化され、生活のスタイルが世界的に共通となる。それは、丁度、各家庭にテレビ、冷蔵庫、洗濯機、掃除機といったものが共通に存在するようになった変化と似たようなものだ。

 一方、具体的な開発目標については、世界は、ESG,環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)という3つの観点からの開発投資を重視して動いていくだろうとすでに予測されている。

 スターバックスはコーヒー豆は99%をフェアトレードに変更し、ナイキやGAPでも数年以内に綿製品を100%オーガニックコットンに切り替える予定という。

 また、2015年に成立したパリ協定で、世界は2050年にカーボンニュートラル達成という目標を設定し、化石燃料によるエネルギーからの脱却を宣言した。気候変動を認めず、石油企業を温存しようとするトランプ氏のような愚鈍な人は少数である。すでに世界の大勢はエネルギーシフトに邁進している。現存の化石燃料は遠からず使用が不可能となる。

 また、このまま社会のデジタル化が進めば、その維持に必要となる電力が著しく増大し、世界的に電力不足となり、既存の電子回路の技術では、ある程度以上の開発が不可能となることが予想されている。

 ICT(Information and Communication Tecnology)の省電化、微細化の要となる光電融合技術に日本のNTTが取り組んでいることは頼もしい(IOWN)。微細半導体に代わる新しい技術革新が日本で起きるかもしれない。

 しかし、本ブログ「インターネットは神か悪魔か」でも論じたように、21世紀初頭はIT革命によるインターネットの発達で個人意識の覚醒が起こり、グローバル化の良い面が出ていたが、ちょうど2015年頃からグローバル化の負の側面が出始め、世界が不安定になってきてしまったのである。

 しかし、気候変動への対策は待ったなしであり、世界のほとんどの人々はそれに気づいている。経済成長を始動した発展途上国の指導者が自国のプレゼンスを上げようとして起こす緊張があっても、全人類の生存がかかっている以上、すべての国が協力せざるを得まい。ただし、その体制を築くには、もう少し世界が環境の危機に見舞われなければなるまい。今世紀の難しさは、その辺にあると言えそうである。             (2024/02/10  一部内容はイマココラボのサイトより引用)

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