宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

インターネットは神か悪魔か

2023年11月28日   投稿者:宮司

 以前、本ブログで、インターネットは個人を地球規模で結びつける技術であり、人類を一つにする第三次産業革命であると書いた(「人類史の四区分」2023/09)。

 冷戦が終結し、IT技術が開発され、21世紀の初めには、経済の流通が世界的に自由化され、中国を世界の工場としてグローバルなサプライチェーンが形成され、グローバリズムの発展はその可能性を高めたように思われた。私は、これからは少なくとも先進国間では戦争のない時代が始まると考えた。残念ながら2022年にはロシアのウクライナ侵攻が始まった。
 
 2010年を過ぎる頃から、SNSが発達し、ネットにあふれるフェイクニュースと虚偽主義はポピュリズムを生み出した(本ブログ「虚偽主義とポピュリズム」2020/12)。典型的なものは、2016年の米国大統領選挙におけるトランプの当選である。2020年にはトランプは落選したとはいえ、虚偽主義に踊らされた米国民は、議会占拠という暴挙に出て、民主主義の危機を作り出し、また、米国の深い分裂を生み出し、今に続いている。

 SNSを利用した虚偽主義の猛威は、世界を覆っている。今年9月の、スロバキアの国会選挙で極右政党が得票を伸ばし、EU離脱の動きが出ているのも、それである。この他、EU諸国では、虚偽主義に踊らされた人々が、保守的な政策を掲げる政党に票を投じ、間違った方向に進めば、EUは解体の危機にある。これに対し、EU議会は、デジタルサービス法を2023年8月に施行した。これは、憎しみを煽るような発言は現実世界で違法であり、デジタル世界でも違法である、という立場に立って、SNS上のフェイクニュースの氾濫を抑えようとするものである(今井佐緒里氏のレポートによる)。

 私は、すでに、本ブログ中の「SNSの規制はいかにあるべきか」(2021/04)で、SNSの規制について論じた。しかし、現実には、SNSの凶暴な面が露出し、世界を危機に陥れようとしている。このまま放置すれば、いずれ人類は分裂と対立の時代を作り、自ら滅び去っていくであろう。

 いうまでもなく、SNSやインターネットは技術の産物であり、原子力同様、人類にとって諸刃の剣である。それ自身に問題があるわけではない。要は、その使い方である。国連は、グローバルな虚偽主義やフェイクニュースの規制の合意を作るべきだ。また、プラットフォームを提供する各社は、自己規制の基準をつくり、社会的に問題となるような発信を制御するように努めるべきだ。イーロン・マスク氏のように自身が問題となるような発言を繰り返す経営者は論外である。そして、何よりも、人類を構成する人々はすべて、フェイクニュースを見破り、虚偽主義に惑わされない強い意志と知性を持つようにならなけらばならない。

 個々の人々の意識を高めることによって、虚偽主義を克服することこそが、最も適切な対処である。人類は、SNSを、人類が共同して平和で豊かな社会を築くことにこそ使用しなければならない。環境問題や資源問題は、人類が共同して取り組む姿勢を作ってこそ、解決できる問題であり、分裂と対立の中では、決して解決できない。信頼できる科学の情報によれば、環境問題に起因する地球の破局は今世紀中に訪れるはずであり、今、早急に体制を整えなければ、人類は死滅するであろう。(2023/11/28)

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