宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

イスラエルとパレスチナの問題

2023年10月9日   投稿者:宮司

ハマスのイスラエルに対する今回のミサイル攻撃に、日本の人々も注目し、さまざまな意見が飛び交っている。しかし、問題の本質を弁えない意見も多い。

 イスラエル国内のヨルダン川西岸地区とガザ地区は、1993年のオスロ合意によって、将来のパレスチナ国家の領土となるべく暫定自治権が認められた区域である。

 1994年に開始された暫定自治は、行政府長官をPLO議長であったアラファトが務め、2004年の死後はアッバスがこれを務めている。しかし、2006年のパレスチナ総選挙では急進左派のハマスが過半数の議席を獲得し、PLO穏健派との内部対立が深まり、2007年にはハマスがガザ地区を占領し、それが続いているのが現状である。

 ハマスは、イスラム原理主義者の集まりで、イランと手を組み、度々イスラエルに武力攻撃を行い、イスラエル政府によって制圧されている。イスラエル政府は、暫定自治を尊重し、ガザ地区にハマスとパレスチナの市民を閉じ込めている。しかし、ガザの市民生活が困窮するほどであるのは、行き過ぎであり、これはユダヤの原理主義者達の主導である。また、原理主義のハマスが権威主義の統治を行い、ガザ地区の住民を抑圧していることも見逃すことはできない。住民は二重に苦しめられている。

 一方、ヨルダン川西岸地区には、ユダヤの原理主義者たちが私兵を連れて強引に入植し、パレスチナの人々を圧迫している。これはもちろん禁止されなければならない行為である。

 パレスチナ暫定自治政府はすでに130カ国以上に承認されているが、米国や日本では未承認である。

 従って、日本人には、イスラエル国内で、パレスチナ・アラブ人とイスラエル・ユダヤ人が領土支配権を巡って争っているように見える。 もちろんこれは誤解である。

 実際は、ユダヤ人の中には、イスラエル・アラブ(イスラエルに住んでいるアラブ人)と共存し、尚且つパレスチナ・アラブ(パレスチナに住んでいるアラブ人)とも友人となろうとしている人々が大多数である。また、アラブ人の中にもユダヤ人と共存しようと考えている人々も多い。

 中には、積極的にユダヤ人とアラブ人の融和を図ろうとして、「Hand in Hand」という学校組織を作り、幼少の頃からの共存を模索している人々もいる。また、「Interfaith Encounter Association」といって、宗教の違いを超えた相互理解の組織を作っている人々もいる。また、積極的に紛争に介入し対話と相互理解を通じて共存を模索する指導者を養成している組織もある。

 しばしばイスラエルを訪れ、平和活動に尽力している人々と接触した私の率直な感想である。

 今回のハマスによる攻撃は、例えば北朝鮮が韓国にミサイル攻撃を仕掛けたようなもので、イスラエル政府が「これは戦争だ」というのも頷ける。

 要は、ユダヤ人もアラブ人も、そして日本人も原理主義者たちの扇動に乗せられないことが肝要である。原理主義者たちが目指す暴力による問題解決を決して許してはならない。

 冷静に、原理主義者たちが制圧され、イスラエルに対する攻撃が収まり、ハマスがガザ地区に閉じ込められることを待つことが適切な対応である。第三次世界大戦の始まりだなどと大騒ぎしてはいけない。イスラエルとパレスチナの問題は、話し合いと相互理解により解決するべきである。(2023/10/09)

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