宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

人類史の四区分

2023年9月6日   投稿者:宮司

私がこのブログで書いて来たことをまとめ、人類史の四区分を提案してみよう。

 人類史の区分の仕方については、古来、様々な見方がなされてきた。ここでは、戦争の発生と終了に絡んで考えてみる。

 原人は、森から平原へ出て二足歩行を始め、家族単位で暮らしだした。そこでは、日日の食料の調達が毎日の生活のすべてであった。

 現生人類の発生の頃は、人類は家族単位で生活し、それがいくつか固まって暮らすムラ社会を伴っていたと考えられる。食料の調達や住まいの確保、自然災害や獣からの自衛が生きるすべてであったろう。もちろん生殖の営みは欠かすことができない。いわゆる原始共産制と言って良い。そこでは身分の差別などもなく、人々は長幼の序や伝統や慣習を社会の紐帯(Social Slidarity)として生きていた。宗教の始まりのようなものも発生していた。これが第一の時代である。

 そこへ、第一次産業革命とも言うべき、食料革命が起きる。農耕と牧畜の開始である。これに依って食料の安定供給が実現し、人類の個体数は確実に増加し出し、紀元が始まる頃には地球上で2.3億人を突破した(推計)。もちろん、食料の安定供給は備蓄を生み、それは資産となり、貧富の差が生まれ、村社会の階層化と序列化が進んだ。社会の紐帯として宗教が生まれ、思想ができ、様々な法が生まれた。

 そこで、食糧危機の時には隣村を襲って食料を確保する、すなわち戦争による略奪が始まった。人類は、戦争に勝つために連携し、小国家から大国家を作り上げ、限られた富を奪い合うための戦争に明け暮れた。これが18世紀まで続く。これが第二の時代である。

14世紀になると、イスラム社会で保たれたギリシャ・ローマ文明が刺激となりルネサンスの時代が始まり、それは宗教改革を生み、大航海時代という異質文明の相互アクセスを生み、自然科学の発達をともなって、啓蒙思想の発現につながっていく。この啓蒙思想は、それまで力の差異による支配、非支配の関係を当然としてきた人類に、初めて人権の平等と自由という概念を与えた。それは一神教の中で生まれた「神の元の平等」から「神」を取り去ることによって生まれたとも言える。宗教の世俗化が始まった瞬間でもある。

 啓蒙思想は、「王が権威や権力で国民を治める国家」という国家の概念を覆す、社会契約による国家、すなわち、「国民が等しく国家の維持に責任をもたなければならない」という「国民国家」を生み出した。

 これは法の性質を根本的に変えた。それまでの上位のもの(支配者)が制定し、下位のもの(支配される人々)に与える法というものから、国民(社会の成員)の総意で制定し、社会を統御する政府(社会の指導者)を縛り、同時に社会に安定をもたらし、人権の平等と自由を保障する法に変わったのである。つまり、法の力のベクトルが変わったのだ。これが民主主義であり、自由主義であり、自由主義市場経済なのである。

 もちろんいまだに国民国家を標榜しながら、実態は権威主義で、指導者が国民に法を強制する国家も存在している。しかし、歴史の流れの中で、それらも民主主義に変わらざるを得ないであろう。

 18世紀末に始まる第二次産業革命、すなわち機械革命によって人類の生産力は飛躍的に伸び、近代化が始まった。しかし、それは国家間による植民地争奪戦を生み、国民国家の出現とも相まって、帝国主義に基づく激しい戦争が繰り返されることとなった。第一次、第二次の両世界大戦、冷戦を通じて、20世紀は国家の時代となり、他方では、民族自決と国民国家が結びつき、多数の国家が発展途上地域に生まれた。しかしながら、この間、人類の個体数は生産力の発展に伴って伸び続け、現在では80億人を超えるまでになっている。これが第三の時代である。

 20世紀の終わりから始まったデジタル化という第三次産業革命は、社会のデジタル化と近代化の完成に伴う生活様式の画一化を生み出した。すなわち人類の地球化が始まった。それはグローバルなサプライチェーンを生み、次第に発展途上国をも巻き込み、世界のGDPは右肩上がりで伸び続けている。それに伴い環境破壊や資源の枯渇が人類全体の解決すべき命題となって急浮上した。

 もう人類は戦争を終了し、協力一致して問題に対処せざるを得なくなった。これが第四の時代である。

 ちなみに、ウクライナ戦争は、こういった人類史の流れに逆らった一人の指導者による歴史誤認の結果である。世界は一刻も早く意味のない戦争を取り止め、一丸となって更なる生産力の発展と豊かな社会(近代化が地球上のすべての地域で完成した社会)、安全な社会(環境問題が解決した社会)、心が通い合う社会(小規模の意志共同体に満ちた社会)の実現に向けて取り組んでゆかねばならない。      (2023/09/06)

世界-経済