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差別が差別を生む社会に戻るな

差別が差別を生む社会に戻るな

 「日本人ファースト」という言葉の危険性については先に述べた。どうもそれだけでは足らないようであるので、もう一度吟味する。「ここは日本だから、日本人ファーストと言って何が悪い」と主張する人々がいる。これは誠に稚拙な議論だ。

 相互主義という言葉がある。国際関係はそれで保たれている。もし日本で、日本人ファーストが当たり前ならば、中国では、中国人ファーストが当たり前で良いということになる。米国では、米国人ファーストだ。世界中がそのようになれば、海外渡航など危なくてできなくなってしまう。海外の観光旅行などに行って差別されて酷い目にあっても、文句を言うことはできない。

 参政党自身が、憲法案の前文で「日本は世界に先駆けて人種平等の主張をした」と誇らしげに書いている。国際連盟において、白人ファーストが当たり前であった時代にそれを主張したのであるから、立派である。しかしそれは、日本人ファーストと言う排外主義の主張とは相容れない。

 16世紀に生きたトマス・ホッブスが、このような自分たちのグループだけを特別視して他を排除することを人間が繰り返したならば、最後は、「万人の万人に対する戦争」となると説いた。

 日本人ファーストと言っている人々も、本当に日本人ならば誰でも信用できると思ってはいないだろう。差別は差別を生み出して、それを繰り返せば、結局信用できるのは自分だけと言うことになる。

 だから、ホッブスは、社会契約を結び、ルールを作って、法治社会のなかで人々が共存できる道を求め、民主主義に行き着いたのだ。

 もっとわかりやすく言えば、社会が進んで、個人意識が生まれた時、人類はこれまでの家族やムラといった無自覚な共同体から離れて、いったん個人としてバラバラになり、その個人が集まって社会を作るための自覚的な方法を探した。それが、啓蒙思想であり、民主主義なのだ。そして民主主義の中で最も大切にされるのは、個人の人権であり、人権が平等に保障されることだ。

 実は外国人の犯罪率は日本人より多いのは事実であり、2024年には日本人が0.22%、外国人が0.41%である。そして21世紀となり、刑法犯罪の検挙数は2005年に43,622件であったが2024年には15,541件と大幅に減少傾向にある。念の為書き添えておくと刑法犯認知件数は2005年の236万件余りから2020年には61万件余とこれも大幅に減少傾向にある。在留外国人の数が201万人(2005年)から376万人(2024年)と増加しているので、これらを考え合わせると、日本の治安は近年大幅に良くなっている。外国人の犯罪率が日本人より多いのは事実であるが、全体の犯罪件数も減少しているので、これを持って外国人が特に危険だとは言えない。また、母数の違いから、犯罪件数でいえば、外国人の犯罪は日本人の犯罪と比べ、圧倒的に少ない。ちなみに2024年では、外国人の(刑法犯を含む全ての)犯罪は15,416件(外国人人口376万人の0.41%)、日本人の犯罪は264,000件(日本人人口1億2千万人の0.22%)と計算できる。警察庁のデータベースと報告書にもそのように書かれている。

 結局、人間は社会を作って、その中で生活しているので、互いを信用して生きていく他に生きる道はないのだ。その中で、道を外れて犯罪を犯した人々を検挙して隔離し、その更生を図っていくしかない。

 人間が生きると言うことはそれに尽きる。そして人々がグローバルにつながった今日、たとえ外国籍であろうとも、隣り合って同じ社会の中で生きる人々を差別することはできない。

 原始時代から現代にかけて、人間のコミュニテイ、つまり、共存して生きることのできる社会の範囲は徐々に広くなって、今では地球規模となっている。もちろん、今でも、戦争や戦闘は尽きていない。けれども、そうであるからと言って、自分たちの生きる範囲をより狭いところに限定して生きていこうとすれば、それは古い時代、戦争がより多かった時代に逆戻りすることになる。そうなってはいけない。

 人間は前を向いて生きていくことを通じて、社会のあり方をより良いものとして、最後には真の世界平和に到達できるであろう。(2025/07/29)

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