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参政党の憲法案を否定する

参政党の憲法案を否定する

                      前文

 日本は、稲穂が実る豊かな国土に、八百万の神と祖先を祀り、自然の摂理を尊重して命ある者の尊厳を認め、徳を積み、文武を養い、心を一つにして伝統文化を継承し、産業を発展させ、調和のとれた社会を築いてきた。

 天皇はいにしえより国をしらすこと悠久であり、国民を慈しみ、その安寧と幸せを祈り、国民もまた天皇を敬愛し、国全体が家族のように助け合って暮らす。公権力のあるべき道を示し、国民を本(ママ)とする政治の姿を不文の憲法秩序とする。これが今も続く日本の國體である。

 国民の生活は、社会の公益が確保されることによって成り立つものであり、心身の教育、食糧の自給、国内産業の育成、国土と環境の保全など、本憲法によって権利の基盤としての公益を守り、強化する。

 また我が国は、幾多の困難を乗り越え、世界に先駆けて人種の平等を訴えた国家として、先人の意思を受け継ぎ、本憲法によって綜合的な国の守りに力を尽くし、国の自立につとめる。あわせて、各国の歴史や文化を尊重して共存共栄を実現し、恒久の平和に貢献する。

 日本国民は、千代に八千代に繁栄を達成し、世界に真の調和をもたらすことを宣言し、この憲法を制定する。

                      以上

 上記のものは、参政党が創憲として公開した憲法の構想案の前文である。

 この構想案は、一言で言えば、天皇を中心とする家族国家を國體とする、神社本庁が見れば感涙するような憲法案である。喜ばしいことに「國體」という文字も入っている。

 私が、このブログの当初から、常に問題としてきた日本の伝統の誤解に基づく国家観であり、それは天皇の名を借りた専制独裁国家に道を開くものだ。擬似共同体の思想そのものである。つまり、日本軍国主義やナチスと同質であるのだ。

 これは典型的な反近代主義の思想であり、個人より全体を優先するものである。個人の人権に対する配慮はかけらも見られない。実際条文を見ても、国家が(対外的に)主権を有する規定はあっても、国家の本質を定める権力の所在の規定が見当たらない。国民主権の規定がないのだ。そして国民の権利規定は、生存権、選挙権が規定されているのみで、その他の平等権や思想信条の自由などの人権規定は一切存在しない。また、天皇の勅令は法律に優先するものとして考えられている。奉勅命令は全てに優先するのだ。まるで戦前の日本の失敗を繰り返すための国家像である。

 これを参政党の党員の人々が考えたとしたら、その人々は自ら奴隷となることを選択しようとしていることと同じである。

 近代社会を構成する基本的な考えがかけらもない。おそらく、民主制に詳しいご皇室も拒否されるような内容である。

 おそらく、これは、参政党の基本認識として、「個人」という近代社会に特有の概念が、社会の構成要素として存在しないというのが理由として考えられる。その代わりに、社会の構成要素として考えられているのは、「家族」である。従って、「個人の人権」ということが無視されるのである。いったい、38%を占めるという日本の単身世帯はどうなるのか?恐ろしく社会の実態に無知な憲法案である。

 この反近代のバイアスに満ちた憲法案を受け入れる人々は、恐ろしく社会の実態や社会思想に無知な人々である。歴代の自民党政権の右派論客もここまで無知ではなかった。この人たちは、自分たちが認めた憲法案で、自分たちが虐げられる可能性があることすら理解できないであろう。まさしくトランプを選んだ米国大衆と同根である。問題は、このような人々を作った教育にありそうである。戦後90年を経て、教育の中で社会科学を無視し続けた歪みがこのようなところに出てきたのである。団塊の世代は猛省しなければならない。

 今からでも、遅くはない。実証主義の歴史観や、個人を基礎とする近代社会が生まれた経緯をあらゆる手段を使って知らしめなければならない。私のブログも、その手助けとなることを願って書かれている。

 今回東京選挙区で二位当選した参政党の女性は、日本の安全保障のためには核武装が必要であり、最も安上がりの兵器だ、と説いたという。その論理で世界中の国家が核武装をしたらどうなるか?核兵器の管理が不安定となり、核戦争が起きる確率が無視できないほど高くなることが理解できないのだ。しかも、唯一の被爆国である日本の世界での役割を無視した核武装論である。つまり常識がないのである。

 参政党を支持する人々には、猛省を促したい。そして社会というものをよく考えて、真摯に憲法案を作り直してほしい。(2025/07/28)

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