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日本のポピュリズムに思う

日本のポピュリズムに思う

 今年の5月、「日本の更なる経済成長は可能か」というブログ記事を書いた。

 どうも記事の内容に沿った現状認識は日本人の世論の中にはあまり無いようだ。

 現在、石破首相の退陣をめぐり、多くのポピュリズム的な世論が飛び交っている。その殆どが、日本の経済の停滞を憂え、そして、移民社会の到来を憂いている。

 しかし、これは矛盾している。現在の日本の経済停滞の最大の原因は、労働者不足である。そしてそれを解消するためには外国人労働者の受け入れという選択肢しかない。移民社会の到来を拒否して、経済成長を求めることはできない。

 まさしく、対極の政策を要求しているのが現在の日本のポピュリズムである。もう少し、実態を注意深く見るべきである。

 現在の日本の人口バランスは、45歳から49歳がもっとも多く、それより若い世代は、若くなるにつれて減少している。50歳から74歳まではどの世代も厚みがある。75歳以上は年齢を重ねるほど減少している。

 つまり、日本人だけで経済成長を望むのは不可能なのだ。現に日本人ファーストを掲げて躍進した参政党の神谷代表さえも、現実を直視し、「優秀で勤勉で誠実な外国人労働者を、適切な法律のもとで、人口の10%程度まで日本に受け入れなければならない」と言い出している。

 すでにこの労働者不足の事態は早くから予想されていた。だから、老年者の定年を延長し、女性の社会(労働)参加を促すような法律が作られていたのだ。

 しかし、もうそんなことでは対処できないほど、日本の労働者の状況は変わってしまった。しかも、若い世代は、職業を選り好みして、いわゆる3Kの仕事には就こうとしない。

 このような状況で、経済成長などできるはずがない。もっとも、革命的なテクノロジーを開発してそれを商業ベースに乗せれば別だ。実は経産省もそれを熟知して新しい技術開発に投資しているが、成果は上がっていない。

 しかし、私の上述のブログでも指摘したように、現在の日本では、国民は十分に先進国の生活を満喫している。したがって、急速な経済成長を求める必要はない。政策的に可能なのは、分配にメスを入れることだ。経済の競争力を損なわない程度に、富裕層に課税し、国債を発行し、それらを原資として、既存の社会資本の維持管理整備、そして減税と社会福祉の充実を通じて需要を喚起し、分配を是正することだ。

 外国人労働力の受け入れと、これらの政策をバランスよく調整すれば、日本経済はまだまだ捨てたものではない。

 そして、大切なことは、より良い市民意識を国民に持ってもらえるように、教育や広報を通じて国民がポピュリストにならないように配慮することだ。案外これが、SNS全盛の時代にあってもっとも大切かもしれない。

 そのように考えてくると、石破首相はもっともバランスの取れた指導者と言える。党内事情はさておき、国民の中に、続投を支持する人々が多いのは案外このような理由によると思われる。
(2025/09/02) 

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