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IT社会とウクライナ戦争

IT社会とウクライナ戦争

 当初、誰もが一両日で陥落し、降伏すると予想したウクライナのゼレンスキー政権は、国民に徹底抗戦を呼びかけ、ウクライナ国民は一丸となって戦い、強大なロシア軍を跳ね返している。

 欧米諸国は、全てがウクライナを支持し、ロシアへ経済制裁を発動し、ウクライナへ武器弾薬を送り込み、義勇軍にも参加しようとしている。これは、世界の民主主義国家群が、侵略という犯罪を犯した権威主義のロシアに対し、一丸となって制裁を行なっているということだ。さらに世界の世論がそれをバックアップしている。

 ウクライナは、東部地域を含めて、全てのウクライナからのロシア軍の撤退を要求している。ゼレンスキーは圧倒的な支持を集め、プーチンに対して一歩も引かない政治的手腕は世界中が認めるところとなった。

 EUは正式にウクライナを受け入れ、共同してロシアに対抗することとなりそうである。

 一方、ロシアは、結果として、あれほど嫌がったウクライナのEUやNATOへの加盟を前進させる結果を作ってしまった。プーチンの完敗である。

 なぜ、こうなったか?軍事力では圧倒的な優位を持っていたはずのロシアであるが、一旦自分都合の侵略を開始したら、国連安全保障理事会では、15カ国のうち、ロシア非難決議に対し、ロシアは反対、中国、UAE、インドは棄権しそれ以外の11カ国が賛成した。また、その後開催された国連総会では、ロシア、シリア、北朝鮮、ベラルーシ、エリトリア以外の世界中の141の国々が非難決議に賛成し、35カ国が棄権した。その他、あらゆる国際的な団体から非難され、また国内、国外を問わず、世界中のSNSを使用する人々の批判と非難決議賛成諸国による制裁に晒された。もはや、ウクライナを占領したとしても、ロシアの世界からの孤立は避けられない。

 未だ不透明なのは、ロシアがウクライナを潰す手段として小型核兵器の使用に踏み切るかどうかである。そうなっても、欧米の自制により、大型核兵器の撃ち合いによる第三次世界大戦には繋がらないと予想する。しかし、ウクライナの民間人の犠牲者は百万人規模となり、ロシアはジェノサイド国家として歴史に名を残すこととなろう。万が一にもそうならないように、ロシア国民を含む、全世界の人々が停戦と核の不使用を訴え続けなければならない。

 つまり、すでに現代は、軍事力の強弱で国際関係を決定できる時代ではなくなっているのだ。世界の諸個人がそれぞれ個人の立場でSNSを通して発する意見の流れを無視して、軍事力を使い、政治家のみの意志で世界を動かすことはできなくなったのだ。意図的に作り出された虚偽情報も飛び交うが、圧倒的な侵略戦争反対の世論の前には効果を持たない。

 これはまさしく、IT革命による人類社会の根本的な変化である。国家間の問題や世界の問題を、一握りの政治家たちの談合で解決することはできなくなってしまった。これからは、全世界の人々の意思をITで確認することを抜きにしては、物事は進まなくなったのだ。

 これこそが、IT社会である。ITはしばしばポピュリズムを増進させるとか、フェイクニュースで世界を混乱させるとか、否定的な面のみで捉えられてきたが、今回は、圧倒的な世論形成の手段として、新しい社会の姿を作り出している。


 これからは、全ての個人が、知識を磨き、世界に開かれた意識を持った諸個人となり、個々人の意識を集約して人類の社会を方向づけていくことになる。IT革命である。(2022/03/01)

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