宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

自浄能力を失った神職たち

2022年6月26日   投稿者:宮司

 

本年五月は、三年に一度の神社界の二大組織である神社本庁と神道政治連盟の役員改選の時に当たっていた。

 そして、平成27年に発生した神社本庁百合ヶ丘職舎の不動産不正売却事件の不正を正そうとして行動し、神社本庁から懲戒処分にあった当時神社本庁職員であった稲貴夫、瀬尾芳也両氏が神社本庁に対する地位確認請求事件を平成29年に提起し、地裁で勝訴したのが令和3年三月、神社本庁側は上告し、高裁が地裁の判断を正当として上告を棄却したのが同年九月、神社本庁は再び上告し、最高裁が上告棄却として、判決が確定したのが今年の四月二十一日であった。

 本件は、地位確認訴訟であるが、その発端となった不動産の不正売却に関しては、すでに同一の方法にて過去二十年に渡って神社本庁を舞台として繰り返し行われており、その刑事責任は、本庁副総長から総長となり4期十二年に渡って君臨してきた田中恆清氏とその影のように両輪となって神社界を食い物にしてきた現在の神道政治連盟会長の打田文博氏にある。

 私は、こういった現状に我慢できず、令和2年夏に田中恆清氏を東京地検に背任で刑事告発したが、地検特捜部は当時広島の河合夫妻の選挙違反事件で忙殺状態だったので、もっと自力で証拠を集めろと言われ、結局証拠不十分で不起訴となった。その後時効が成立したために、次に「神社界に民主化とコンプライアンスを求める」キャンペーンをネットで立ち上げ、その署名簿を神社本庁の最高権威者である統理の鷹司尚武氏に届けた。

 刑事事件としては時効が成立してしまっているが、民事の地位確認訴訟の中で明らかとなったように、田中、打田両人の神社本庁資産の不正売却の事実は、これを疑うに足る十分な証拠が裁判で認められている。しかるに、この両人とそれに随順する一派は、神社本庁の理事、すなわち責任役員の多数を占めていたために、上告に上告を重ね、結局、神社本庁に対し、裁判と敗訴を通じて約八千万円の支出を生じさせ、事務局ともども、一切その責任を取ろうとしない。この一味が神社本庁に与えた損害は、少なくみても数億円は下らないと思われる。

 このような現状であるので、本来であれば、最高裁の判断が下された直後に、神社本庁の最高議決機関である評議員会を招集し、理事責任役員の責任を追求すべきであった。

 しかし、恒例の役員改選が間近であるところから、五月末の定例評議員会に持ち越されることとなった。

 五月二十八日、神社本庁評議員会が開催され、百六十名程の評議員が全国から招集された。大部分が神職の代表であり、一部が(氏子)総代の代表である。最初に議長、副議長が選出され、田中派の一人が議長となった。統理は満場一致で再選された。次に全国各地区から選出済みの理事の承認が求められた。しかし、主に総代から選出された評議員の一部から、今回の理事は、神社本庁が最高裁で敗訴した以上、これを推進した理事の再選は認めることはできないとの意見が再三出された。議長はこれらを無視して、採決し、田中派が過半数を占める理事の陣容が確定した。

 このように不可解な採決で確定した理事会において、次期の総長、副総長について討論が交わされた。神社本庁庁規には、「総長は、役員会の議を経て、理事のうちから統理が指名する」「副総長は、総長の意見を聞いて、理事のうちから統理が指名する」とあるので、統理は、総長に北海道の芦原高穂氏を、副総長に福岡の西高辻信良氏を指名し、共に受諾の挨拶を行った。これに対し、神社本庁総務部長の荒井実より「役員会の議を経て」とは「役員会の議決を経て」という意味であり、役員会の議決を得ずに統理が勝手に総長を指名することはできないとの異議が出された。当然田中派の策謀である。これに対し統理は法律の専門家の意見を聞いて結論を出すということにして、その場をおさめられたという。その後、六月三日の役員の任期切れを目前にして、統理は最高裁判事経験者等の意見を聞かれ、「議を経て」が議決を必要としないということを確信され、芦原総長、西高辻副総長を書面にて正式指名され、神社本庁に提示された。しかるに、本庁職員は、最高権威者たる統理の指令を無視し、各県神社庁に対し、総務部長名で、総長・副総長が未定であるので、決定するまでは田中総長、吉川副総長が残任するとの通達を出した。呆れ果てた行為である。これに対し、反田中派の理事の連名で、この間の経緯を示す書類と統理の指名書の写しが各県神社庁に送付された。愛知県では、すでに後者の書類のみ、各支部を通じて、全ての神職に開示されている。

 ここで、明らかとなったのは、過去に国旗、国家、皇室を大切にしようと大宣伝を繰り広げてきた神職たちは、いざとなったらそんなものは放り投げて、自己の権益のみに固執する人々が大部分であるということだ。鷹司統理は今上陛下のご親族であり、神宮大宮司を経て統理となられた。このような方を敵視し、事務局ともども横暴を重ねようとする田中派一味は徹底的に排除されなければならない。

 神道政治連盟の役員改選も同時期に行われ、打田体制は変わることなく、唯々諾々と犯罪者をトップに祭り揚げてしまった。ここには、統理がいなかったということが最大の原因と思われる。要するに、神職の人々は、たとえ犯罪者でも、自分たちで制裁を加えることはできないのだ。社会的な正義よりも、内々の付き合いを大切にするのだ。これでは、本当に自浄などできるわけが無い。

 それでも、熱田神宮、出雲大社などの宮司たちは、正常化のために立ちあがろうとしている。統理と連携し、一日も早く、悪党の一味を神社界から追い出し、そして神職教育を見直し、社会正義を貫く勇気を持った神主さんたちを多数育ててほしい。  (2022/06/26)

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