宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

ウクライナ戦争の今後

2022年3月25日   投稿者:宮司

3月19日付けの本ブログで、私はロシアの敗北とウクライナからの撤退を予想したが、事態はより悪い方向へ進んでいるようである。

 予想通り、ロシア地上軍の士気は低下し、投降や脱走、また自傷兵も出ている。ロシア軍は戦術を変更し、ミサイルや大砲、航空機といった飛び道具による爆撃を使用して、攻撃対象を一般市民まで広げ、消耗戦の様相を呈している。ロシア軍に一片の理性があるならば、この辺で停戦し、条件交渉をまとめ上げるはずであるが、その気配はない。

 昨日の情報によれば、ロシア軍司令部は兵の戦線離脱を防ぐために、脱走兵を処刑する組織を前線に送ったという。爆弾も次第に過激なものとなり、生物化学兵器の使用も取り沙汰されている。米国は、この戦争を戦争犯罪と特定した。まさしくプーチンの狂気の沙汰である。このまま放置すれば、最後は核兵器を使用するであろう。もちろん欧米諸国が最初から危惧しているように、NATO諸国が前面に立てば、狂気のプーチンは全人類を道連れにして死んでも良いと思い、破れかぶれの全面核戦争に打って出るであろう。北半球は死滅し、残った南半球も「核の冬」により長くは持たない。人類の終わりである。私はそれを一番恐れている。

 21世紀を特徴づけるグローバル化により、世界規模のサプライチェーンを作った人類は、戦争によらず協力と連帯により富を豊富化し平和で安定した社会を築けることを発見し、とりわけ先進国間の戦争はあり得ないという時代に到達した。しかし、20世紀以前の様に軍事力で物事を解決しようとする、時代遅れの発想を持った一人の独裁者の所為で人類が破滅することは、断じて避けねばならない。

 プーチンを追い詰め過ぎず、少しずつ弱体化させて、この戦争をやめさせ、ロシア国民が自力で彼を排除できるように仕向けていかなければならない。そのためには、戦争反対、ウクライナ支持の世界世論を巻き起こし、あらゆるツールを使って正しい情報をロシア内部に流し、経済的な締め付けをさらに強めていかなければならない。

 中国も、この戦争を観察し、軍事力を強化すれば世界を思い通りにできるということが誤りであって、国家間の協力と連帯により共に豊かで平和な社会を作るべきであることにそろそろ気づき始めているであろう。この辺りで中国、米英、NATOが前面に立ち、協力して、ウクライナとロシアの仲介を行い、ロシアの顔が立つような停戦の妥協案を提示し、ロシア軍の撤退とウクライナの現政権の維持を確保し、ロシア経済の締め付けを緩め、ロシアを国際社会に復帰させ、プーチンの退陣と民主化を促し、上手くいけばNATOの解散と引換にロシアのEU加盟と核兵器の放棄を促す。このように進めば、最善であろう。先進諸国の指導者は難しい舵取りをしなければならない。

 ロシアは2回目の国債の利払を行った。指導部の中に軋轢が見え、数名の幹部は戦争反対を唱え出し、失脚した人もいるようだ。プーチン以外の指導者たちには少しは理性が残っていることを期待したい。

 ところで、この戦争を好機と捉え、日本国内で、中国や北朝鮮を仮想敵国として憲法改正や核武装を声高に叫ぶ人々が目に付く。これらの人々は、プーチンと同じく20世紀以前の思考にとらわれている。国の安全保障に一番必要なのは、近代的な民主主義社会を維持していくために国際的な経済、文化、技術、学問等々の交流を密にし、お互いにお互いを必要とする関係を強固に作り上げていくことであって、一定の軍事力は必要であるが、それのみで片がつく問題ではない。

 まして、日本人に核兵器が正しく管理できる能力があるとは思われない。自民党の憲法改正案を見ればわかるように、核武装を主張するような人々は大日本帝国時代と同様な権威主義の体制が大好きであるように見える。これでは、ロシアや中国と同じ穴の狢となってしまう。

 どうしても核武装をしたいのであれば、いっそ独立国であることをやめて、米国と合併し、51番目の州になってはどうか?それならば、一夜にして簡単に世界一の核武装国家となることができる。もちろん日本州は独自の言語、文化、法律、習慣等をそのまま維持する。銃社会は拒否すれば良い。ただし、ハワイのようにかなりの面積の土地を軍隊に提供しなければなるまい。

 トランプにそそのかされても動かなかった米軍を見れば、民主的な軍隊として信用できる。核兵器の管理も、日本人が行うより安全である。また、独自の核武装に関わる費用も技術も必要ない。米国も日本の経済力と地理的な位置を考えれば、賛成するであろう。いずれ世界は連邦化すると考えれば、もう自主独立を大事にする時代ではない。これもIT革命とグローバル化の結果である。よく考えれば、これが最良の策であるように感じられる。(2022/03/25)

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