宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

終戦に向かうロシア

2022年3月19日   投稿者:宮司

 17日のロンドンからの情報によれば、ロシアの陸海空軍の動きがとまっているという。いよいよ戦費が尽きたのだ。仮にこれが誤報であったとしても、侵攻からすでに3週間、ロシアには戦争資源が枯渇し、もはやミサイルや航空機といった飛び道具による爆撃に頼るのみである。勝利をなお追い求めるには核兵器の使用が選択肢として存在するが、これは人類の破滅につながる。

 一方ロシアとウクライナの停戦協議の担当者の口から停戦に前向きな言葉が出始めた。ロシアの外相も停戦を言葉に出し始めた。プーチンは戦争が順調に目的を達していると言い始めた。これらは全て、核戦争に移行するのではなく、ロシアがその面子を保った形での終戦と撤退を模索し始めたことを示している。

 ウクライナは勝利する様に見える。

 ロシア政府の上層部は全て、この特別軍事作戦の目的はあくまでもウクライナのネオナチ勢力の排除とウクライナの国民の救済のためであり、この作戦では民間人や社会インフラへの攻撃は全く行っていないと言い張っている。これは、戦争終了後、ロシアの犯した戦争犯罪の責任を前線の指揮官のみに追わせ、プーチンはじめ政府要人は実態を知らされていなかったことにしようとする目論見であると思われる。すなわち、戦後もロシアは国際社会の主要国家の一つとして留まりたいのだ。また、17日の国債の利払いもクリアしたようだ。これらはそのための足掻きである。

 停戦後、ロシア軍は撤退し、ウクライナは中立国となるであろう。おそらくスウェーデンのような武装中立国となる。将来的にはEUにも加盟が許されるであろう。クリミアはロシアに帰属せざるを得まい。問題は、ドネツク・ルガンスクの東部2州の帰属である。ウクライナは譲れないところであるが、ロシアが折れるとも思われない。ここは、世界の世論がウクライナを後押しすべきである。

 今回の戦争は、20世紀までの軍事力対軍事力の力の戦争に、IT革命による世界の世論が加わった21世紀型の戦争となった。NATOとロシアの対決図式で見れば、結果的には、NATO側の、軍隊を出さずに、世界世論の後押しを得て、経済制裁を前面に出し、資金と武器をウクライナへ援助するというソフト路線が、軍事力のみに頼ったハード路線のロシアを打ち負かしたのである。

 もちろん、米英から送られた影の諜報部隊の活躍や情報戦略の緻密さに加え、ウクライナの国民の結束力と勇気、そして練度と士気の高いウクライナ軍の戦闘力があっての勝利である。そしてもう一つ、忘れてならないのは、ウクライナはアフガニスタンやイラクのような前近代的な社会を内部に含んだ国家ではなく、国民の全てが、自由で近代的な生活を享受していた近代国家であったことだ。このような国にあっては、国民は隣国の古臭い権威主義のもとに隷属することは決して望まない。これが、早期にこの戦争の帰趨を決めた最大の理由である。

 さて、ロシアがいくら言い逃れしようとしても、世界の目は、この戦争の犯罪性を見逃すことはない。当分はロシアは国際社会で有力な地位につくことはできない。しかし、何と言ってもロシアは世界で最大の核武装国家である。扱いは慎重にしなければなるまい。まず、ロシア国民の洗脳を徐々に解き、ウクライナ侵略の真実に目覚めさせ、プーチンを民主的に退陣に追い込み、ロシアの民主化と透明化を促すことが肝要である。その後、国際社会やEUに迎え入れ、世界のサプライチェーンに再度入って貰えば良い。NATOは時期を見て解散すべきだ。

 今回の、権威主義体制のロシアが、力づくで現状の変更に挑み、世界の市民の民主的な世論に敗れた事実は、権威主義の政府を持つ国々の国民に自国の政体の再考を迫ることとなろう。そのようになれば、民主的な国家群による世界経済のリンクが成立し、世界中が豊かになり、徐々に国境が開かれ、世界連邦が成立するであろう。そのように人類史が進むことを期待したい。(2022/03/17)

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