宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

NATOとロシア

2022年2月25日   投稿者:宮司

ウクライナ情勢が緊迫している。

 ロシアのプーチン政権は、安全保障上の脅威を取り除く必要のためと称して、かねてから親ロ勢力に実効支配されているウクライナ東部のドネツク州、ルガンスク州の一部地域を、それぞれドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国と称する独立国と一方的に認め、両地域のロシア人と親ロ派人民の保護の名目でロシア軍を侵攻させた。これは2014年当時のクリミア共和国の独立とその後のロシアへの編入と同様のやり口である。

 決して許されてはならないことだが、ロシア軍の侵攻がその両地域で止まれば、戦火はあまり広がらないであろうと考えられる。しかし、現状では、ロシア軍はウクライナ首都のキエフを占領する勢いであり、もし、ウクライナ全域をロシアが支配することになれば、かつてのアフガン戦争と同様の泥沼のゲリラ戦に突入することは避けられまい。

 なぜ、プーチンは核兵器の使用をちらつかせてまで、ウクライナ占領にこだわるのか?本当にロシアの安全保障の危機なのか?確かに、表面上は、ウクライナがNATOに加盟し、そのミサイル基地がウクライナに建設され、ロシアを向けば、いやであろう。

 しかし、実態は、ロシアはNATOを構成しているEU諸国と経済的に分かち難く結びついている。ロシアがソ連として共産主義の盟主であった当時は東欧の共産国家群とともにコメコンという経済圏を作り、またワルシャワ条約機構という軍事同盟を作り、西側と対立していた。その名残がNATOという軍事同盟である。ソ連崩壊後、東欧の共産主義国は全て民主的な共和国となり次々とEUやNATOに加盟してきた。そうした国々は西欧経済圏の一部となり、豊かな生活を享受したいという希望があったからだ。

 かつてのソ連の中心勢力であったロシアも、経済的に上昇したいという欲求は同様に存在し、グローバル経済の進展とともに貿易相手国はEUの国々が中心となっていった。中でも、原発を放棄したドイツがロシアの天然ガスの最大の顧客となり、パイプラインが設置されたことは相互の経済的な結び付きを深めた。

 つまり、ロシアは、将来的には、ロシア自身がEUの一部として経済的な統合を図り、その主要国の一部となるべき道筋が開かれていた。その最大の障害が、今では意味をなさなくなったNATOという軍事同盟であった。ソ連崩壊ののちも、ロシアが最大の核保有国の一つであり続けたために、欧米諸国はNATOの存続にこだわり、表面上は民主主義となったロシアにプーチンという独裁者が出現したために、NATO対ロシアという対立構造が出現したのである。今回、独裁者のプーチンは、NATOの幻影に怯え、不凍港を有するクリミアを併合し、さらにはウクライナをも併合しようとしている。国家の安全保障を軍事力のみにこだわれば、このような悲劇的な結果を招くという良い見本である。

 今後は、ロシアは世界から経済的な孤児とされ、占領地域を含んで、大きな経済的な困窮に苛まれることとなる。いつの世も人々の願いは豊かで平和な社会に住むことである。ロシアもプーチン氏も早くそのことに目覚め、経済的な繁栄こそが安全保障の根本であることに気がついてほしい。そして、NATOという無用な軍事同盟は一日も早く解消すべきであろう。(2022/02/26)         

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