宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

憲法改正を考える

2022年2月16日   投稿者:宮司

 日共系であるが、「九条の会」とは、若干のお付き合いがある。もちろんこの会は憲法改正に反対している。

 最近、名古屋地区のスタッフの方からお電話をいただいた。聞けば、岸田政権が維新の会などと組んで、憲法改正を画策している。反対運動をしたいので、名前を賛同者の一人として頂戴したい、とのこと。

 私はそもそも憲法改正に全面的に反対しているわけではない。特に九条の改正については、既に安倍政権で集団的自衛権に関する細かな法律の整備は実質完成している。今更九条を変えなくとも、自衛のための戦争を遂行するための法的根拠と骨組みは出来上がっている。

 問題は、その他の自民党他が主張する憲法の改正点と民主主義を両立させることができるのかということだ。民主主義のためのチェックシステムや適切な管理システムを抜きにして一方的に家族や緊急事態の問題について憲法改正を行い法律を整備することは慎まねばならない。私の立場をご説明して、最終の判断はお任せすることとした。

 ところで、本当に岸田政権は、憲法の改正に取り組むのであろうか?私は俄に信じがたいが、もしそうであるならば、もう一度、初めに立ち返って、憲法改正案そのものの内容を検討するべきだ。 

 米国から素案を与えられたとはいえ、現在の日本国憲法は民主主義をその根幹に立派に持っている。御皇室はそれを良くお分かりである。

 もし、これを当初の自民党改正案のような全体主義的なものに改めてしまったら、米国民主党の主流派に見放されてしまう。現在の日本人のほとんどが米国と同調し、民主主義の陣営に属していたいと願っていても、日本が、中国同様の権威主義の国家となる要素を現在の改正案は持っているのだ。つまり、米国と無際限に同調しながら、欧米と離反する方向を持つ憲法を実現しようとしているのが現在の日本の保守層である。困ったことに、本人たちにはこの自覚がない。
 
 当初の自民党憲法改正案は、それを紹介した当時の自民党総裁である谷垣禎一氏が「エッジを効かせた」と言ったように、保守派に偏重した内容となっている。当時の与党は民主党であり、自民党は下野していたために、このような内容となったと思われる。彼は、これをかつての憲法調査会のような国会討論にかけて、より中道的、民主的なものとすることを想定したのであろう。しかし、そのような方向に進まず、自民党内では、改正案の内容の精査は行われず、安倍政権が与党となるや、闇雲に議員数を増加させ、力でこの改正案を押し通そうとした。これでは、当初案をより良いものとする方法がない。ここに、憲法改正の問題点がある。

 自民党を始め、憲法改正論者は、この点を踏まえ、改正案の問題点を一つづつ吟味し、民主主義が損なわれないような改正を目指すべきである。そのような改正をして初めて、欧米から自立した民主主義国家として認められるであろう。繰り返すが、戦争条項が問題なのではない。法律等の運用や行政のシステムが民主主義に基づいていることが何よりも重要なのである。 

 ついでに言えば、共産主義は、基本的に原理主義であり、権威主義である。日本の政治の構造的な矛盾は、本来権威主義を目指すべき共産党が民主主義を擁護し、民主主義を目指すべき自民党が権威主義への憲法改正を目指そうとしているところにある。   (2022/02/16)

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