宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

岸田政権の課題

2022年1月15日   投稿者:宮司

 岸田新政権は、当初、格差社会の是正を掲げ、賃上げとデフレの脱却を行うと明言したが、やはり、適切な方策はないようだ。財界に賃上げの協力を仰ぐだけでは、賃上げとデフレの脱却はできるわけがない。

 そこで、カーボンニュートラルという世界規模の環境目標に沿った政策を目玉として打ち出した。 最近では、コロナ・オミクロン株の大流行が目前となったので、医療資源の整備と対応に追われている。

 注目すべきは、経済政策に「財政の健全化」を掲げたことだ。

 これは、デフレの脱却と真っ向から対立する。財政の健全化は、財政支出の抑制と増税、もしくは税収の増加によって達成される。財政支出の抑制は財政投資の抑制、すなわち市場活性化への刺激や新分野の研究開発への投資を抑制することになるので、経済不況から脱出できず、税収は増えない。よって増税のみが選択肢となるが、それはデフレ下の経済不況をますます進めることとなる。カーボンニュートラルを進めるためには新規の技術分野への研究開発投資が不可欠であるが、それは財政健全化と矛盾する。

 財政の健全化とは、つまるところ財務省の会計を黒字にすることだ。これに対し、日本国全体の国富は現状でも十分に黒字である。財務省の役人を喜ばせることよりも、日本国民が喜ぶ政策を取るべきである。

 それには、当初の計画通り、格差社会の是正のために、財政投資と金融緩和と減税を行い、一刻も早くデフレを脱却すべきだ。また、労働者(納税者)の確保のために、移民法を整備し、千万人単位で移民を受け入れ、経済を活性化すべきだ。1960代、日本は地方から都市への若者達の集団就職で、経済成長に不可欠な労働者(納税者)を確保した。今、同様の経済成長をしようとすれば、発展途上国(地方)から日本(都市)へ若者達を迎え入れるべきである。

 劇的な経済成長を行うには、交通インフラ、電気、上下水道などの社会資本の整備と資本の蓄積、技術の開発、そして安価な労働力の確保が必要であり、現在の日本に欠けているのは、労働力であるからだ。十分な労働力が存在すれば、海外に移転したサプライチェーンの見直しも起きるであろう。また、移民の人々が豊かな生活を求め内需が活性化するであろう。

 安倍政権の経済政策のポイントは、財政投資を抑制し、金融と規制の緩和により市場の活性化を図ったことであり、円安誘導と株式の買い支えにより輸出ドライブと富裕層の歓心を煽ったことだ。これが、大企業と富裕層に莫大な利益をもたらしたが、メセナやチャリティの意識が薄い日本人にはトリクルダウンは期待できなかったのだ。

 岸田政権は、経済政策の王道に立ち返って、移民労働力の大胆な拡充による市場の活性化に舵を切ってもらいたい。もちろん同時に、文化摩擦の解消と社会秩序の安定のための細かな法整備にも着手しなければならない。日本が米国のような移民国家になって初めて、世界のリーダーとなる可能性が開けてくると思われる。(2022/01/15)

日本-経済