宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

グローバル化の到達点

2021年12月12日   投稿者:宮司

人類社会が劇的な変化を遂げた契機が3つある。
第一次から第三次に至る産業革命である。

 第一次産業革命は、狩猟採集社会から農耕牧畜社会への転換点で起きた。つまり、栽培化と養殖化の始まりである。これによって、人類は安定的な食糧の確保に成功し、地球上に一億人以上の生存を可能とした。古代社会の始まりである。

 次に、18世紀末に始まる科学技術による工業化を軸とする第二次産業革命である。人類は、生活物資を平和的に豊富に生産する術を覚え、近代化の扉を開けた。実際、これ以降、人類は物資の獲得のための前近代的な国家間の戦争を無意味なものとした。しかし、同時に、国民国家や民族国家が成立し、そのような近代国家間の戦争が始まった。近代国家は、国民全体が国家に責任を持ち、科学技術を駆使した兵器を開発したために、その戦争は激烈なものとなり、犠牲者も著しく増加した。しかし一方、第二次産業革命のもたらした飛躍的に豊富な物資と医療技術の進歩は、人類の個体数を3億人ほどから70億人以上となるまで劇的に増加させ、ついには地球規模の環境問題を引き起こすに至った。

 さて、現在、20世紀末から始まる第三次産業革命であるIT技術の進歩により、人類は個人レベルでグローバルに情報を共有し、社会はその権力構造の基盤を国家に据えながらも、生産、流通、消費、文化、芸術、思想、学問、環境問題など多岐にわたってグローバルに結びつき、世界は個別の特徴を残しつつ、一体化に向かっているように見える。ちょうど、個人がそれぞれの個性を維持しながら共存できるように、人類もその歴史的、民族的な特性を残しながら共存する方向に向かっている。

 実は、古代から現代まで、人類は戦争を繰り返しながらも、一貫してより多くの人々が平和に共存する社会を求め続けてきた。国家の規模の拡大がそれを証明している。

 しかし、グローバル化が進む今日、国家へのこだわりが、地球社会の具現化を妨げている。実は、国家が権力構造の基盤であるにもかかわらず、すでに、経済、政治、文化、技術、学問、人材等様々な面で、すでにグローバル化が進んでいることは、G7、G20、EUなどの実態を見れば理解できる。

 唯一、グローバルな提携や交流が進んでいないのは軍事の分野である。同盟国間の交流や様々な諜報戦や武器売買の結果としての軍事技術の一般化は進んでいるが、真の意味でのグローバルな軍事力の結合は未だ存在しない。これが人類の課題である。

 実は古くから、アイデアとしては、統合された軍事力に基づく地球規模の抑止力を作り、国家間の戦争や内乱をその力で押さえ込むという発想はあった。おそらく、もう一歩で、それは実現すると思われる。国家内での犯罪や暴動を警察力で抑え込むことが必要であるように、地球規模での戦争犯罪や正当性のない内乱は地球規模での軍事力で抑え込まなければならない。もちろんそのためには、民主的な軍事管理システムや国際司法システムが整備されなければならない。


 極超音速ミサイルや自立型兵器システムなどの軍事技術が開発され、通常戦争が核戦争に転化し全人類が死滅する危険がますます高まっている現在、軍事力の国家を超えた統合はますます必要となってきている。

 グローバル化の到達点は、そこに存在すると思われる。(2021/12/12)

世界