宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

日米連合の勧め

2021年9月20日   投稿者:宮司

 突然の見出しに驚かれた方も多かろう。実は、日米合併論は相当昔からの私の持論である。平成20年に、講演会に招いた若手官僚の方にこの話をしたら、絶句されたことを覚えている。
 当時は、政治が極めて不安定な状況であり、翌年には民主党政権が誕生し、その後の展開はご承知の通りである。その意味では、現在も政治が不安定となり、混沌とした状況は当時と似通っている。私が、今回このテーマを用意したのも、その辺に原因があるかもしれない。

 なぜ、日本人は民主主義という政治形態に未熟なのか?安定した政権がなぜ作れないのか?これは、結局、日本では、民主主義という政治システムは自ら汗水垂らして勝ち取ったものではなく、敗戦という状況の中で、米国から与えられたものであるからである。

 いわゆる左翼、共産主義を信奉する人々は権威主義である。権威主義とは、優れた指導者が大衆を指導し、大衆は無批判に指導者についていくことを是とする体制である。政治システムとしては上位下達、機能的、効率的に組織を運営することができるが、一旦指導者が過った道へ組織を導けば、その指導者を大衆が批判し、交代させる方法がないために、社会そのものが壊滅的な打撃を受けることとなる。

 近代化に伴い、民主主義という政治システムが生まれるまでは、人類は、その強弱の程度はあれ、権威主義の政治システムしか知らなかった。唯一の例外は、古代ギリシャの都市国家における直接民主制であり、これは政治参加の権利が男性の成人市民に限られていて、近代民主政治とは似て非るものであったが、ともかくそれがヒントとなり、社会の近代化に伴う個人化と重なって、現在の近代民主政治を導いたのである。アリストテレスの言葉に、「民主制国家の基礎は自由である。」とある。

 民主主義という政治システムについては、すでに「民主主義とは何か」というテーマで論じているので、ここでは省略し、チャーチルの有名な言葉をあげておこう。曰く「民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが。」

 いわゆる右翼、民族主義者と言われる人々は、天皇を頂点とし、国民が家族となり、相互理解に基づき国家を運営するという儒教的な権威主義を主張する。権威主義という点では、共産主義と同様の弱点をもっており、民主主義とは相容れない。

 したがって、日本では、民主主義者、すなわち、個人の自由を基礎として、互いの自由権を基本的人権として尊重する民主主義は理解されにくい。これが、米国の知識人、学生に一般的なリベラリストが日本では存在しにくい理由である。

 世界は、すでに、民族自決主義や独立自存国家を求める風潮は去り、今では、グローバリズムに基づき、多くの国家が政治的にも経済的にも連携し、相互に協力し、共存を模索する時代に入っている。

 したがって、日本も、民主主義を政治システムとする米国と権威主義を政治システムとする中国の間にあって、常にどちらかへ付くことを迫られている。現在、日本は安全保障条約によって米国と緊密に結びついているが、民主主義を十分に理解できない国民性であるので、いつ、権威主義に憧れ中国側に豹変するかわからない危険性がある。元々、第二次世界大戦時の日本は、中国や朝鮮と一緒になってアジア的な王道主義の価値観のグループを作り、覇権主義的な欧米的価値観に対抗しようとしたという歴史がある。今、中国が、同じように覇権主義の欧米に対し、王道主義の中国という図式を主張して、一帯一路を進めているのはそのコピーである。 このように現在の状況を理解し、そして、EUのような国家グループの存在を目の当たりにすれば、当然、太平洋を囲んだ米国・カナダ・日本・オーストラリア・ニュージーランドといった民主主義の先進国家群が一つのまとまりとなり、連携することは意味がある。インド、インドネシア当たりが続けばさらに良い。台湾を加えれば、中国が激怒するであろうが、台湾独立のためには一番良さそうである。これを太平洋連合(Pacific Union)と名付けても良い。すでに軍事的な協力体制はいくつかの国々で実験的に試みられているが、もう一歩進んで、経済的、政治的により強い結びつきを持ったらどうか。その過程の中で、核武装をはじめとする日本の防衛戦略も確かなものとなり、経済的なパワーも格段に充実するであろう。民主主義の政治システムも、確固たるものとなる。また、元々米国は、移民の国家であり、多様性の共存の実現のために様々な苦労を経験している。米国を中心として多様な文化や民族が共存することはそれほど難しいものではないであろう。もちろん天皇制や日本語や銃器のない安全な社会は地域性として残せば良い。そして、将来の世界連邦の魁となっていくことが望ましい。なお、ここでは、シンガポールと韓国には言及しなかった。この両国は民主主義国であるが、中国と太平洋連合諸国の仲介を務めながら、中国自体の民主化を軟着陸させるために役立つであろう。(2021/09/20)

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