4次元の弁証法
2021年7月2日 投稿者:宮司
本ブログの中で使用される推論の方法論としての4次元の弁証法について述べる。
形式論理学は、平面幾何学と同じように2次元の世界である。これは、「正」と「否(反)」は、相対立するものであって決して交わるものではない。
これに対し、ヘーゲルが始めた弁証法論理学は、「正」と「否」は、その両者を俯瞰する位置に立つことによって、第三の立場に視点を導く。これが「合」の結論であり、形式論理では解決できなかった矛盾が第三の立脚点を求めることにより解決できるとする。
多くの場合、これは、空間的な時代相に時間軸を合わせることによって得られる結論であると考えられてきた。ヘーゲルも、カントがつまずいた認識の問題は時間軸を設定することによって解決できると主張し、主観と客観(客体)の問題を弁証法的に豊富化していく認識が、他我主観を含めて絶対精神に結実していくことにより解決されるとした。
しかし、これは幾何学でいう空間幾何学に対応するものであり、いわば、3次元の弁証法である。それゆえに、ヘーゲル弁証法では、世界の行く末に対し明確な回答が得られたのである。
これは、我々が時間軸を経験している4次元の世界に存在しているために、3次元的な論理学を俯瞰的に理解することが可能であるからである。
では、4次元の弁証法とはいかなるものであろうか? これを知る一つの手がかりは、理論物理学にある。3次元の世界を物理的に理解するためには、一般相対性理論までの古典力学を使用すれば良い。そして4次元の世界の物理的理解は量子力学の領域となる。
量子力学の基本は、観測できるけれども、特定はできないということである。これは存在することは理解できるけれども、位置は確率論的なものとなるということだ。これを論理学的に解釈すれば、推論の正しさは実証できるが、結論は不確定となるということと同じである。
つまり、4次元の弁証法とは、問題の解決の方向は示すことができるが、その結果は特定できず、不安定な答えしかないということだ。
本ブログの中で、しばしば「結果は時の流れの中で繰り返し求められるべきもので、絶対的な回答が存在するわけではない」と述べてきたのは、このような確信が背後にあったからである。 (2021/07/02)