宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

新型コロナウイルス(COVID19)と日本の感染対策

2020年5月19日   投稿者:宮司

 今年の前半は、コロナで明け暮れた。ワクチンが開発されたのち、世界はどのように変わるのであろうか?  分断か?統合か?共存か?興味の尽きない点であるが、人類の未来を決める試金石となることは間違いなかろう。

 日本の感染対策は、二つの点で特徴的である。感染対策の遅さに大部分の日本人は政府を評価していない。一方、それにもかかわらず、現在のところでは、結果として死者や感染者の数は低く抑えられている。理由を正確に説明することは難しい。専門家の意見はTVだけでなくあらゆるメディアを通じて巷に溢れている。にわか評論家も多い。

 私は門外漢であるので、このブログの話題にしないでおこうと思っていたが、最近は上昌広博士をはじめとして多くの理性的な発言も目立ってきたので、自分なりに、日本の感染対策の現状と課題をまとめてみた。

 日本政府は、新型コロナウイルスの発生と日本への流入を受けて、今年の1月に、このウイルスを指定感染症に指定した。感染対策をおこなう上で、感染症の指定は必要であるが、ここで、日本は、決定的なミスを犯した。この指定感染症は、感染が判明した患者についてはたとえ無症状であっても隔離入院を義務付けているからだ。

 ところが、政府のアドバイザーである専門家会議の副座長である尾見茂博士は、山中伸弥博士との3月はじめの対談の中で、感染した患者の8割が無症状であること、同じく感染者の8割が他者に感染させる能力を持っていないことを言明している。すなわち、すべての感染者を洗いだせば、無症状の8割も含め、全員を入院させなければならない。そうなれば、日本の病院は、元気なままで隔離された人々で埋め尽くされてしまう。そこで、専門家会議は、感染者を特定するPCR検査をできるだけしないようにしながら、他者への感染能力を持つ感染者を特定するために、クラスターの追求を行い、そういった人々と、重症化した人々を病院に隔離して治療することに焦点を置いた。その結果、政治家がPCR検査の拡大を約束しても、無差別の検査は極力行わないようにしたのだ。すなわち、COVID19を指定感染症に指定したことと、COVID19の感染力の高さと症状の多様性が矛盾を引き起こし、自縄自縛の展開となってしまった。

 オリンピックも延期が決まり、障害がなくなったにも関わらず、なぜPCR検査が一般化しないのかという理由がここに存在する。指定感染症の指定を3類感染症以下の拘束が軽度のものにしない限り、この状態は続くはずであった。

 しかし、このウイルスは予想以上に感染力が高く、PCR検査を制限しても、感染者は増加し、医療崩壊の危機が目前となった。そこで、各自治体の行政の長である政治家たちが、特定施設や指定ホテルを病院代わりに使用することを考え、強引にそれを推し進めた。隔離入院は自治体の長の指導によるものであるから名目は一応保たれる。指定感染症のままで病院外の滞在と治療が可能となった。また、厚生労働省は3月にこの指定感染症の規定の一部を改正し、縛りを少し緩め、状況の変化に対応した。

 この一次流行はそろそろ収まるであろうが、2次、3次の流行が起きることが予想される。対策のためには、速やかに指定感染症の縛りをもっと緩やかなものとして、随時大規模なPCR検査やその他の検査を行い、感染者数と感染状況を恒常的に把握し、対策を練ることができるようにしなければならない。

 現段階では、日本の死者数は、人口比では世界で最も低いレベルに抑えられている。どうしてそのような状況が生まれたのかはわからない。諸説があるけれども、感染状況の正確な把握ができない現在では、結論を出すことはできない。

 また、死者数については、本年1~3月期の日本の死亡者数が通常の同時期より上回っているために、計上漏れではないかとの指摘もなされているが、真実は不明である。

 無症状の感染者をこれまで野放しにしていたために、潜在的な既往の感染者の数はかなり多いことが予想される。しかし、集団免疫が達成されているとまでは言えないようである。これから実施される予定の抗体検査がその実態を明らかにしてくれると思われる。

 ともかく、日本は、他国と同様に、感染実態の1日も早い掌握を行わねばならない。 (2020/05/18)

日本