宮司のブログ

こんにちは。日吉神社の宮司を務める三輪隆裕です。今回、ホームページのリニューアルに伴い、私のページを新設してもらうことになりました。若い頃から、各所に原稿を発表したり、講演を行ったりしていますので、コンテンツは沢山あります。その中から、面白そうなものを少しずつ発表していこうと思います。ご意見などございましたら、ご遠慮なくお寄せください。

「桜を見る会」と日本社会の堕落

2019年11月19日   投稿者:宮司

 政府主催の「桜を見る会」のあり方に批判が集まっている。

 長い歴史を持っている会であるが、最初は本当にその年に日本の社会に功労があった人々を招待する会であったようだ。しかし、近年は政治家の推薦によりその親族や後援者も招待されるようになり、予算が肥大化し、今回の問題提起となった。

 とりあえず1年は中止し、その後、招待者の選出基準を明確にして再開するようであるが、結局は政治家によって私物化されるのではないか?

 本ブログ中の「教育勅語と契約社会」の中でも述べたが、最近の日本社会は江戸時代のような儒教社会に戻りつつあるように見える。欧米流のコンプライアンス重視の風潮が一時日本にもあったが、絶えて久しい。

 長期化した安倍政権の一貫した儒教的家族国家志向により、日本では契約社会のタガが外れてきているように見える。家族、親族、仲間を重視し、法律を無視し、賄賂、情実、縁故で物事を決める社会が再生したように見える。役人もマスコミも権力者に媚び諂い、忖度に余念がない。不味いことが発覚すれば、書類を破棄し、嘘で塗り固めてその場を逃れようとする。下、上に習うのたとえ通り、これからはこのようなことが一般化すると思われる。このまま進めば、遠からず日本は欧米を中心とする世界の価値観から外れ、堕落し、口先だけの民主主義国となっていくであろう。

 歯止めはあるのか、と問いたい。政治家と役人とマスコミが襟を正し、真面目に生きることに尽きる。

 もともと、日本の官僚は、政治家に諂うことなく、毅然として国家の将来のために尽くすことが特徴であった。最後の内務官僚と言われた後藤田正晴氏の生き方が手本である。それがこれほどまでに時の権力を握った政治家に対し忖度するようになるとは、かつては考えられなかったことだ。もう一度、官僚としてのプライドを持ち直してほしい。

 また、マスコミは戦後の民主国家日本の出発に際し、悪事や悪政を許さぬ社会の番犬となることを誓ったのではなかったか?一部左翼に使嗾されたとはいえ、マスコミ本来の仕事は正義を守ることであり、忖度などもってのほかだ。

 政治家はどうか?彼らは、手続き上は選挙によって選ばれるのであるから、本当の責任は国民自身にある。いくらマスコミに扇動されようと、正しい目を持ち、正しい選択をすれば、まともな政治家を選ぶことができるはずである。しかし、現在のように歪んだ社会となっては、国民に正しい選択を期待するのは少々無理がある。そこで、一つの方法は、国会議員の給与を一人当たり国民所得の2倍程度まで落としたらどうであろうか?それでは広範な政治活動ができないと言われそうだが、それは明細を付した必要経費として計上させ、支給すれば良い。そうすると年収で1,000万円程度となる。こうすれば、豊かな生活ができるという理由で国会議員を目指すような質の悪い候補者は無くなるであろう。ともかく、日本の政治家の給与は高すぎる。国会議員の給与を世界と比較すればダントツの一位であり、米国連邦議会議員よりも高い。ドイツの連邦議会議員の2倍である。戦後GHQが国会議員の給与を官僚のトップの給与と同等以上としたのが、そもそもの発端であるようだ。議員定数の削減も必要であるが、給与の低減はさらに効果があると思われる。

 本ブログで既に述べたとおり、教育勅語や道徳で秩序を保とうとする社会は、このような不正義な社会を生み出す。それは契約をおざなりのものとして、権力者が法律を無視し、好き勝手に振る舞う社会を容認することとなる。すでに日本の社会は崩壊の兆しを見せている。1日も早く、本来の諸個人の社会契約に基づく法律により正義と秩序を保つことのできる欧米流の社会に復すことを願ってやまない。
                            (2019.11.19)

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