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木綿、石油、半導体—世界の構造を決めた生産物

木綿、石油、半導体—世界の構造を決めた生産物

 18世紀の末に蒸気機関が発明されてから、物理的な近代化が始まった。それはイギリスから一気に世界に広がり、世界の構造を変え、時代の覇者を作った。


 19世紀に世界の構造を変えて、イギリス主導の世界、パクスブリタニカを導いたのは木綿だった。

 アメリカ南部の綿花プランテーションは、奴隷制と結びつきながら「キング・コットン」と呼ばれ、北部工業とイギリスの産業革命を同時に支えた。インドでは逆に、安価なイギリス綿布の流入によって在来の綿織物産業が崩され、原料綿花の供給地へと組み替えられていった。19世紀の木綿は、単なる繊維製品ではなく、帝国と植民地、米国の南北対立と人種秩序まで含めた「世界構造の設計図」そのものだったのである。


 さて、20世紀に至って、二度の世界大戦ののち、覇権を握ったのは米国であり、それを支えたのは、石油であった。20世紀の産業、自動車、石油化学、発電と軍事。どの分野をとっても、石油なしには語れない。

 1971年のニクソンによる金・ドル交換停止以後、貨幣は最終的には信用によってのみ支えられるようになった。しかし、基軸通貨ドルの信用を実質的に裏付けた最大の要因は、原油取引をドルに結びつけるペトロダラー体制であり、石油が20世紀後半の世界通貨秩序を支える「実物の錨」として機能した。もちろん、数回の石油危機による調整や金融バブル崩壊といった負の局面も見逃すことはできないが、概ね機能していたといって良い。パクスアメリカーナである。

 そして、米国は世界の経常黒字の赤字分を事実上一手に引き受けるようになっていく。ペトロダラー体制とドル基軸通貨体制の下で、世界の過剰貯蓄と米国の経常赤字は、黒字国の米国債購入を通じて米国に吸収され、その結果として世界経済は対外収支の制約を大きく緩和された形で長期的拡張を続けることが可能になった。21世紀の最初の10年の世界経済の膨張を支えたのはこの体制である。

 しかし、この仕組みを、単純な貿易の「損失」とみなして是正しようとしたのが、トランプの時代錯誤的な貿易戦争論であり、その関税攻勢は、この赤字吸収メカニズムそのものを破壊する方向に働いた。

 また、対イラン強硬策の軍事攻撃と制裁は、中東のエネルギー秩序とペトロダラー体制そのものを破壊しつつある。これにより、貿易通貨としてのドルの力は弱まり、複数の通貨が石油売買に使用されることとなった。皮肉なことに、トランプ自身はそれがドル覇権の土台を自ら弱める行為であることを理解していない。

 21世紀の世界の構造を決定するものは言うまでもなく半導体である。当初、半導体は、世界のサプライチェーンという協調の中で、順調に技術開発が行われた。

 しかし、トランプ政権が対中制裁と安全保障輸出管理でグローバルな半導体のサプライチェーンを傷つけた結果、半導体はもはや世界共通の開発目標ではなく、米国・中国・台湾・韓国・日本・EUが、それぞれ設計・製造・装置・素材・市場・ルールを分担しながら、覇権と安全保障を賭けた多極レースを繰り広げている

 おそらく、21世紀の覇者となるのは、こうした多極的な半導体体制を対立ではなく協調へと束ね上げ、世界経済と安全保障を貫く一つの秩序として「まとめる力」を持つ主体である。

 二つが考えられる。一つは、トランプ時代の混乱を乗り越え、協調性に富み、民主的手続きを大切にするように回復した米国。もう一つは、これは難しいことであろうが、政治構造の変化を遂げ、民主化と自由化(人権の尊重)によって国際社会の信頼を獲得した中国である。


 21世紀のリーダーとなるのは、法の支配を守って国際的な信用を蓄積し、経済力と技術力を基盤にしながら、軍事力を前面に出すのではなく、多様な主体との協調によって世界をまとめていく力を持つ存在であるはずである。

 こうした原理に立って世界を「まとめる力」を持ったものこそが、21世紀の覇者となるだろう。(2026/07/13)

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