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兵器の低コスト化と戦争の変質

兵器の低コスト化と戦争の変質

    

 21世紀に入って、4半世紀が過ぎた今、戦争の意味が激変している。

 それをもたらした最大の原因は、兵器の低コスト化である。ロシアのウクライナ侵略から始まったウクライナ戦争(ロシアは特別軍事作戦と呼び、戦争と認めていない)は、ウクライナのドローン兵器の進歩による、ロシア領土最深部まで達する兵站拠点や燃料インフラ、物流などの社会インフラへの攻撃により、全く新しい局面を作りつつある。

 当初、ロシアは、物量優位であるので、簡単にウクライナを屈服させることができると考えていたが、EU諸国や米国の経済や兵器の援助により、戦争が長引いてしまった。ここにきて、ウクライナは、ドローン兵器技術を開発し、安価なドローンを量産してロシアを攻撃し出した。これに対し、ロシアは、当初、多くの迎撃ミサイルで迎え撃とうとした。しかし、迎撃技術も未熟である上に、ミサイルはドローンより遥かに高価なので、次第に疲弊し出した。ウクライナへの攻撃も、もっぱら高価な攻撃ミサイルに頼っていたが、そのミサイルも在庫が激減しているようである。そこでロシアも最近ではドローンを使用してウクライナを攻撃している。

 つまり、戦争はコストで勝負できる時代に突入したのだ。より低コストで、効果的な兵器を開発した方が、物量頼りに従来通りの兵器で勝負しようとする国々に対して明らかに優位に立ったのである。

 おなじことが、トランプが起こしたイラン戦争(イランへの米国とイスラエルによるミサイル攻撃)にもいえる。イランは、攻撃に耐え、自分たちの持っている貧相な武器で、中東の米軍基地を攻撃し、また、ホルムズ海峡の通行権を質にとって対抗している。世界最大の軍事大国である米国でさえ、攻撃ミサイルの在庫が枯渇し、これ以上の継続的、全面的な攻撃を控えざるを得なくなっている。一つが何百万ドルもする攻撃ミサイルは、そう簡単に増産できない。ホルムズ海峡を開放することもできず、トランプは立ち往生している。

 戦争は、兵器のコスト、戦後の支配地域を復興するコスト、諸国から経済制裁を受けた場合に支払うコスト、こういったものを考えて実行しなければならないものとなった。

 おそらく、中国も、このような変化を目の当たりにして、台湾への武力侵攻による併合をためらっているのではないか? 特に、現在、国内経済が最悪の状態になっているので、諸外国から経済制裁を受けて貿易が止まってしまえば、中国の経済基盤が崩れてしまう。

 北朝鮮は、核兵器を開発装備し、これで外国から侵略されることはないと思っていたが、米国のイラン首脳へのピンポイントの爆撃を見て、斬首作戦の恐ろしさを思い知った。ロシアに兵員の動員で協力しているものの、ロシアが弱体化してしまったので、困っているのではないか?

 実際、核兵器はもう無用の長物となってしまった。かつて米国とソ連は、相互確証破壊戦略に立って、相互の使用を抑止し、バランスを保っていたが、現在では、核兵器は拡散し、テロリストさえ扱うことができると考えられている。しかし、一旦使用すれば、後日、その地域の復旧には膨大なコストが生じるので、使用する意味がない。まして世界中から非難されることが目に見えているので、使用できるものではない。

 従って、現在日本の保守層が密かに望んでいるような核兵器の開発は必要がない。また。時代遅れである。今の防衛戦略は、ミサイル防衛の完全な技術の開発と、ドローンを中心とした機械兵器の開発であるべきだ。より安価な兵器が世界の主流となり、戦争を支配する時代が眼の前に迫っている。

 さらにいえば、もう戦争をしている時代ではないということを思い知らなければならない。かつては領土の拡張や、富の獲得を安易にするために戦争はあった。しかし、現代は、世界レベルでサプライチェーンを整備し、より安いコストで生産し、物流の発展によって、素早く消費地に届けることが、経済的な成功をもたらす。そして世界も豊かになっていく。中国も自由貿易あってこそ、自国の経済発展が可能であった。中国自身がよくわかっているはずだ。だから、自由貿易をもたらすための国境の安定と世界経済の発展を支える通貨制度や融資制度を破壊してはならない。残念ながらトランプはそれを行なっている。米国が世界経済を支えることをやめるならば、どこが変わるのであろうか?最初にEUが思い浮かぶが、指導者が多様であるので難しい。中国あたりが中心となって米国に変わって世界経済を支えるであろうか?しかし、そのためには、政治制度の全体主義を捨てて、立憲主義で、国民の自由と平等を保障する政府を樹立し、世界経済を担う主要資本主義国から信頼されなければなるまい。もう一つの可能性は、米国が方針転換して、かつての世界を支える米国に立ち戻ることだ。これが一番望ましい。しかしそのためには、もう少し米国民が世界と米国の立ち位置を理解する必要がある。

 米国の貿易赤字は世界の貿易黒字の繁栄であり、それほど心配する必要はない。米ドルが基軸通貨であるので、世界の黒字は米国債の購入を通じて米国に吸収される。基軸通貨であり続ければ、米国経済が破綻すれば世界経済のサプライチェーンが止まり、経済循環が破綻するので、世界各国はある程度米国の希望を配慮するであろう。貿易不均衡の問題は二国間交渉で解決されるべきである。昔の日米間の繊維交渉や自動車交渉を思い出せば良い。また、あらゆる産業を国内に残すことは不合理である。自由貿易とサプライチェーンが保証されていれば、製造原価が安価な地域に製造拠点を移動させることは自然である。そして現代では、非製造部門のITやAIを核とするサービス貿易が目覚ましく伸びており、その恩恵を最も受けているのがBigTecを有する米国であることを忘れてはならない。(2026/08/21)

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